【ブルーロック】悪女だった私は今＿＿。II (ページ17)

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第64話ページ17

「どうした！？」
そんな声と共に、ドタドタとみんなが走ってくる。彼らがいたところと私たちがいたこの場所はそこそこ離れていて、恐らくここに来るまで5分ほどだったと思うけれど。その時間が私にはとても、とても長く感じられた。

「…みんな…っ！」
私がそんなことを思っていれば、姫花ちゃんは自分の目に涙を溜めて、泣きそうな顔をする。そして、私の横を通り過ぎ、1番前にいた世一くんの胸に飛び込み、そう言った。

「非凡、その手何があったんや？」
恐らく来たばかりでまだ状況が飲み込みきれてない烏くんが姫花ちゃんの血が出ている腕を指して、聞く。姫花ちゃんは、目から涙をこぼす。そして、

「…っ、…あの、ね。Aちゃんが、急に、“あんたなんかいなくなればいい”って…。い、って、カッターだし、てきて…。」

カタコトになりながら、そう言った。姫花ちゃんの言葉にみんなは、彼らは驚き、息を呑んでいた。そして、私の方を恐る恐る見てきていた。

「わたし…っ、Aちゃんが…怖い…。Aちゃんのことが、こ、怖くて仕方ないよ…。」

泣きながら、少し震えながらそう言う姫花ちゃん。その姿はまるで、百獣の王であるライオンを前にしたまだ子供のウサギのようで。本当に私が姫花ちゃんを傷つけたような言い方で。きっとみんなも私が姫花ちゃんを傷つけたと信じていて。私に向けられる視線は敵意や、軽蔑を込めたようなものに変わっていっていた。

その視線が私は何度も過去に向けられたことがあって。その後何を言われるか、どうなるかまでなんとなく察しがつく。前世で一度そんなことをされた経験があったとしても。それは慣れることなんてできなくて。あの時の経験が少しばかりトラウマのようなものなっていた私にとって、今のこの状況はただただ怖いもので。気づけば、私の体は少しだけ震えていた。

楽しかった時間には必ず終わりが来るから。私は前世最低なことをしたから。今世でもこんなことされて当然でしょう。大丈夫、最初から知っていたでしょう。こんな事になるくらい。始めから私は悪女で彼女が、姫花ちゃんがヒロインだったのだから。

「ねぇ、それ本当にAがやったの？俺にはAがそんなことするようには思えないんだけど。」

私の頭がどんどんネガティブなことを考える方にいっていた時。私の耳に、そんな声が届いた。