第63話 ページ16
私たちがいる部屋に続々と人が集まってくる。絵心さんとアンリさんは別の部屋からの参加のようで。いつの間にかどこかに行ってしまっていた。
第一次選考を突破した全125名が揃った時_____。
姫花ちゃんがチラリとこちらを見て、出てくるよう目で合図される。少しばかりの不安を胸に抱いて私は部屋を後にした。姫花ちゃんは私よりも少し先に出ていたため、私はその背中を追う。
さっきまでいた部屋を出て、1番最初にある曲がり角。そこを姫花ちゃんは曲がり、立ち止まった。そして、くるりとこちらを振り返る。私もそれに続いて、曲がり角を曲がる。
「姫花ちゃん、話って何かな?」
止まったきり、話し始めない姫花ちゃんを見て、私が話を切り出す。姫花ちゃんは少し考え込んだ後、口を開いた。
「私、言ったよね。あんまり彼らに、世一くんたちに近づかないでって。」
「え?」
私が困惑しているのを置いといて、姫花ちゃんはさらに続けて言った。
「これから私がするのは、全部Aちゃんのせいだからね…!!」
そう言って姫花ちゃんはポケットの中からカッターを取り出す。そして、カタカタと音を立てて、刃を出していく。
「あ、。」
そこまでの行動で私はなんとなく姫花ちゃんがしようとしていることがわかった。なぜなら、私も前世でやったから。愛されたくて、でも愛されなくて。誰かを悪者にしないともう愛されていると感じられなくて。自らを傷つける。
予想通り、姫花ちゃんはその歯を姫花ちゃん自身の綺麗な腕に当てて、ツーッと滑らせていく。人が怪我をしたら血が出るのは当たり前のことで。切った場所からすぐドロリとした赤紫色の液体が流れてくる。姫花ちゃんの綺麗な白い腕はその色に染まっていく。
姫花ちゃんはカッターを私の近くに投げ捨てて、私がやったかのようにする。そして、ありったけの大きな声で、
「キャァァァァ!!!!!」
と、叫んだ。
あぁ。終わった。漠然とそう感じる。たとえカッターキャーをしたのが私じゃなくて姫花ちゃんでも。普通なら私が守られる立場だったとしても。この世界でそんなことはない。この世界では姫花ちゃんがヒロインだから。
いつか、ここを去らなきゃいけないことはわかっていたけれど。覚悟はできていたけれど。でも、その事実が今はすごく辛く感じられていた。
それほど私の中で、彼らは大切な人になっていたのだ。嫌われたくない、出て行きたくない、そんなわがままを思ってしまうほどに。
200人がお気に入り
「ブルーロック」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そっち | 作成日時:2024年2月11日 11時