第60話 ページ13
「なんだその顔は、notオシャだ。」
絵心さんがいるモニタールームを後にして、私が1人歩いていた時。前から歩いてきていた蟻生くんにそう言われる。
「んーそーかな?いつもと変わらないと思うけど…。」
できる限り笑顔で答えようと頬を上げながらそう答える。
だけど蟻生くんから、
「いや、notオシャだ。オシャなお前にはもっと明るい顔が似合う。何かあったのか?」
と、言われてしまう。
「…!」
その蟻生くんの問いは図星で。姫花ちゃんのことについて何かあったばかりで、思わず顔が引き攣ってしまう。きっと私の今の顔は酷いものだろう。
「その顔は図星のようだな。よければ“俺”が話を聞くが?」
何も答えない私に蟻生くんは綺麗に手入れされている髪の毛をなびかせて、そう言う。微かに“オシャァァァ”という効果音のような物を響かせて。
いつもと同じような行動をして伝えてくれているその様子に思わずクスっと笑ってしまう。ブレないなぁ、なんて思いつつ。
「その顔はオシャだな。さすがナチュラルオシャなだけある。今度ヘアケアについてもう一度しっかり聞きたいところだ。」
私が笑っているのを見て蟻生くんはまた髪をオシャァァァとなびかせながら、そう言っていた。
「蟻生くんはブレないね。少し元気出たかも。」
「本当か、まぁ流石“俺”だな。」
「ふふ、そんな動いてて疲れない?トレーニング終わりでしょ?」
ずっと髪をなびかせてオシャと言い続けてる蟻生くんにそう疑問をぶつけてみる。でも、すぐにそれを蟻生くんは否定する。
「そんなことはない。なぜならこれが1番オシャだからだ。Aもそう思うだろう?この“俺”が大オシャだと…!!」
「そうだね、オシャかも。」
そう私が答えればより一層髪をなびかせる彼。
それだけかと思っていれば、今度は「特別だからな。」と言って、オシャァァァという効果音とともに独特なポーズを見せてくれる。それも面白くて、私はクスクスと笑ってしまう。しばらくそれを続けていれば、
「蟻生ー!!ご飯食べに行こうぜ!!」
と、蟻生くんのチームメイトから蟻生くんが誘われる。
蟻生くんは少し名残惜しそうにしながら、ポーズをやめ、立ち上がる。
「蟻生くん、ありがとう。元気出た。」
「ふむ。何かあったらまた言え。この“俺”が話を聞いてやる。」
私はその言葉に頷いて、蟻生くんと別れる。
少しだけ心が晴れたような気がする。姫花ちゃんのことは何も解決してないけれど。私は私ができることをしよう。
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作者名:そっち | 作成日時:2024年2月11日 11時