第58話 ページ11
烏くん達のおかげで、姫花ちゃんと一度話してみる決心がついた私は姫花ちゃんを探す。
だけど、どの棟に行っても姫花ちゃんはいなかった。心当たりのある最後の場所、絵心さんがいつもいる部屋に行けば、そこには絵心さんと一緒にいる姫花ちゃんが見えた。
「…姫花t「そろそろ決めたか、姫花?」
私が中に入って、姫花ちゃんに尋ねるより前に、絵心さんがそう姫花ちゃんに尋ねた。その声色はいつもより真剣に聞こえて、思わず物陰に隠れてしまう。その時の空気は完璧に出ていく空気感ではなくて。出ていけなくなってしまう。
「…ううん。ごめん、叔父さん。そろそろリミットなのはわかってるんだけどね。まだ、決心がつかないの。___“海外”、に行くのは。」
「え、?」
姫花ちゃんのその言葉。海外に行ってしまうというその言葉に頭が追いつかず、口から小さくそんな声が出る。
どういうことなのだろうか。姫花ちゃんがここから出ていってしまうのだろうか?なんで…?
「そうか。早く決めろよ、時間は有限なんだ。」
「うん、分かってる。もう少しだけだから。そしたら決まると思うから。だから、それまでは…!みんなに、特にAちゃんにはこの話しないでね。」
「…あぁ。」
「それじゃあ、私は行くね。」
私が困惑している間にも話は進んでいて、気づけば姫花ちゃんは別の扉から出ていってしまっていた。そこからしばらく、私は姫花ちゃんの話と、私には内緒にしたがっていたことへのダブルショックでそこから動けなくなっていた。
「そろそろ、出てきたらどうだ?姫花はもういないぞ。」
絵心さんからそう言われる。
どうやら、絵心さんには私がここに書かれていたことがバレていたらしい。敵わないな、なんて思いながら私は物陰から出ていく。
「気づいてたんですね。じゃあ、私が今何を思っているかわかりますよね、きっと。」
「まぁな。話して欲しいんだろ?姫花のこと。」
私はその言葉に頷く。
「別に話してもいいが、姫花に直接言うなよ。」
「分かってます。姫花ちゃんは私のことをなんとも思ってないかもしれないけれど、同じマネージャーとして知っときたいです。」
ヒロインと、悪女という違いはあるけれど。知っておきたい、漠然とそう思ってしまった。
絵心さんは静かに頷くと、ポツリ、ポツリと話し始めてくれた。
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作者名:そっち | 作成日時:2024年2月11日 11時