第43話 ページ45
「は、?」
千切くんの口からそんな声が出る。
「いやね?千切くんがあまりにも寂しそうに笑うからさ。」
「ふは、なんだそれ。なんでそう思うんだ?」
千切くんの口から乾いた笑いと共に、疑問の声が出る。
「えー?そうだな。私の考えだけどね、人って“怖い”って簡単に口に出せないと思うんだよね。」
私は慎重に言葉を紡ぐ。
「でも、千切くんはちゃんと“怖い”って言った。それはきっと相当勇気がいることだと思う。特に千切くんの場合はさ。」
千切くんは静かに私の目を見つめていた。
「沢山の勇気を持つ千切くんが弱いわけない。絶対に強い。」
私は、言いたいことが伝わったかなと不安になりながら千切くんの目を見つめ返す。
千切くんは、私のその言葉に
「俺が強いかぁ。」
と、ぼそりと呟く。
「うん、強い。だからさ、きっと千切くんはサッカー続けようが、やめようが大丈夫だよ。」
「姫花とは真逆のこと言うんだな。」
「え?」
私の戸惑いの言葉に彼はフッと笑って「そうだよ。」と言う。どうやら、姫花ちゃんから“もう一度走ってみてほしい。”と、“今の千切くんのサッカーを知りたい。”と言われたらしかった。
「まぁ、私は千切くんがしたい様にすればいいと思うよ。私は千切くんの決断を尊重する。」
「ほんとAは、周りとは全然違うこと言うんだな。」
「そう?」
でも、そうだとしたら私がきっと悪女だからだ。
周りと視点が違うから。
「俺、そろそろ行くわ。時間あれだし。」
千切くんはそう言って食器を持ちながら、立ち上がる。
私はそう言われて時間を確認すると、そろそろ私も仕事に行かなければいけない時間だった。
「本当だね。私も片付けるから一緒行こ!」
私も食器を持って立ち上がり、千切くんの隣に立つ。
私たちは食器返却の棚に食器を置く。
「ねぇ、千切くん。最後に一つだけ!」
「…?」
「何はともあれ、応援してるよ」
私は、千切くんの方に握り拳を突き出す。
「ぷは!そんなことかよ!」
千切くんは、そう笑った。
その時の笑顔は多分、先ほどよりも寂しさは無くなっていて、千切くんの本当の笑顔に近い様な気がした。
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作者名:そっち | 作成日時:2023年11月30日 14時