第35話 ページ37
「も〜!すごく探したんだよ〜!!」
私と糸師くんの後ろから、姫花ちゃんがそう言って近づいてくる。どれくらい探し回っていたのか、それとも、ここまでずっと走っていたのか、どちらかはわからないけれど姫花ちゃんの額にはうっすらと汗が浮かんでいた。
「ごめんね、潔くんたちと話盛り上がってたから邪魔したくなくて。」
「邪魔なんてこと全然ないのに〜!って、凛ちゃん!なんで1人だけ部屋に入るの〜!」
姫花ちゃんは笑いながら、そう言ってくれる。ただ一つ疑問に思ったのが、姫花ちゃんの糸師くんの呼び方。そう、姫花ちゃんは彼のことを“凛ちゃん”と呼んでたのだ。
「え、糸師くんって男だよね?」
「あ?」
男装系女子かもしれないと言う考えが私の頭をよぎり、怖くなって糸師くんに尋ねると、睨まれてしまう。
そんな様子を見て姫花ちゃんは吹き出しながら言う。
「Aちゃん、違うよ〜!私が勝手にそう読んでるだけ!」
「ッチ。」
「凛ちゃんごめんね、へ、変な誤解招いちゃった!」
まだ笑いのツボが収まらないのか、姫花ちゃんは笑いを堪えながら言う。
「てか、お前俺を苗字で呼ぶんじゃねぇ。」
「え?」
姫花ちゃんの方に向いていた顔が私の方に向き睨まれながらそう言われる。
私睨まれすぎじゃないか…?ついに嫌われ始めちゃったかな…。
「クソ兄貴と同じ名前で呼ぶな。」
「えー?じゃあ凛ちゃん?」
「なんでそうなる。やめろ。」
姫花ちゃんは私の視界の端で笑っている。
「仕方ない、凛くんでいい?」
凛くんは、納得したように頷く。
「あ!私は凛ちゃん呼び続行だからね!」
「やめろ。」
凛くんは心底嫌そうな顔で姫花ちゃんを見る。
それでも姫花ちゃんはめげずに、そう呼んでいい許可を取ろうと頑張っていた。
私はそんな2人を横目に、仕事を進め始める。
馬狼くんがいるチームの時のように、空のボトルと使用済みのタオルを回収するため探す。
「ねぇ、凛くん。そのタオルもらってもいい?」
言い合いのような、掛け合いをしていた2人に私は話しかける。
部屋の中にあるボトル、タオルを全て集め終わったから。
「なんでだ。」
「洗濯するから。もう使ってないから回収しても大丈夫でしょ?」
「ん。」
凛くんは、その短い言葉だけ発して、私にタオルを渡す。
「ありがと。姫花ちゃんもそろそろ行こ?」
「はーい!凛ちゃん、これからも頑張ってねー!」
姫花ちゃんは元気に返事をし、凛くんを応援した後、私と一緒に部屋を出た。
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作者名:そっち | 作成日時:2023年11月30日 14時