第34話 ページ36
「わ、ごめんなさいっ!」
「ッチ、うるせぇーんだよ。」
私が曲がり角でぶつかった相手、糸師凛くんにジロリと睨まれてしまう。特大の舌打ちも添えて。
私は床に落ちている糸師くんのタオルを拾う。
「これも。落としちゃってごめんね。」
そう言って私は渡す。
糸師くんはそれを私の手からとる。
「……。」
糸師くんは先程からずっと口を開かず、ただずっと私のことを見ている。
「あの、糸師くん?」
「なんだ。」
私が名前を呼ぶとようやく答えてくれる。
「これから私糸師くんがいるチームの部屋に行こうと思ってたんだけど、一緒に行ってもいい?」
「別に。好きにしろ。」
そう言って、歩き始めている彼。
冷たい物言いだったけれど、それでもいつもより歩くペースが遅いのは、きっと彼が少しだけ口下手だから。だから、私はまだ嫌われてない。
そう、自分に都合のいいように解釈して、私も歩き始める。
歩き始めて、どれくらいが経っただろうか。
彼との無言の空間が少し飽きてきて、私から彼に話しかけた。
「ねぇ、糸師くん。糸師くんってさ、もしかして糸師冴の弟?」
「…!」
今までほとんど動いてなかった糸師くんの表情筋が僅かに動いて、少しばかり驚いた顔に変わる。
「正解、かな?」
「知ってどうすんだよ、お前には関係ねぇ。」
「特に何もしないよ。ただ、周りに自分よりすごい人がいると辛くない?」
「は、?」
これまた驚く彼に私は続ける。
「いやね。周りに自分よりすごい人がいたら比べられるじゃん。〇〇の友達なのに、とかさ。」
そう。周りにすごい人がいれば比べられる。ヒロインと悪女はまさにその関係。ひたすらにヒロインと比べられて、嫉妬したのがこの私。そう悪女。
過去の私の経験思い出しながら、私は言葉を紡ぐ。
「知らねぇ。俺はあのクソ兄貴をぶっ潰してぇだけだ。」
そんな私の言葉を糸師くんはそう言って両断する。
「そう?ならいいんだけど!だけど、あんまり無理しないでね。」
「俺が無理してるとでも言いてぇのか?」
「ううん、違うよ。ただ、糸師くんには、糸師くんだけのやり方があるんだからね、っていう話。」
「そーかよ。そんなの知らねぇ。」
そう言って、糸師くんは少し歩くペースを早める。
私もそれに追いつけるようにペースを早める。特に意味もない糸師くんとの会話はここで終わった。
ちょうど糸師くんのチームの部屋に着いた時。
後ろから、
「あー!!!居たっ!!」
と言う声が聞こえた。
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作者名:そっち | 作成日時:2023年11月30日 14時