宇髄さんの所のお弟子さん

霞稽古 ページ39

あの手合わせから時透とAはお互いの時間が合う時(主に時透に呼び出される)時に手合わせを行うようになっていた。

「霞の呼吸漆ノ型…朧。」

時透を中心に濃くなる霧にAは目を閉じて木刀を握り直し深く深呼吸をする。

全神経を集中させると、体からシューっと音を立てて汗が蒸発し始める。
同時に火傷の跡が濃く広がり血管が顔の側面に浮かび上がるのがAは感覚的に掴めてきていた。

霧の中での戦いは時透の方が有利ではあるが、勘の良さだけが取り柄のAは木刀が触れる寸前の所で避け、花火の呼吸の構えを取った。

『花火の呼吸、参ノ型っ蜂！』
「っ!?」
『音の呼吸、伍ノ型っ鳴弦奏々！』

Aは時透が技によって出された霧を逆に利用して不規則に動く型を使用する事によって錯乱させる事に成功し、すかさず音の呼吸で追撃したのだ。

「ちょっ!?っ霞の呼吸陸ノ型、月の霞消！」

時透も負けじとその追撃を相殺したが、お互いの技の威力により耐えられなくなった木刀が先に音を上げ折れたのだった。

折れるだけなら良かった、しかし2人は意外にも負けず嫌いらしく、どちらが先に折れたかを言い争いを始めるのを鴉達はやれやれといった感じで見ている。

『いーや！時透君の方が先に折れてたね！』
「Aの方が先に折れてたよ、その目一度胡蝶さんに診てもらったら？」
『その言葉そのままお返ししますけど〜？』

バチバチバチっと二人の間に火花が飛び散るがこういった些細な喧嘩は日常茶飯事と化していた。
いつもその喧嘩の終止符を打つのはAの腹の音である。

「ははっ、もうそんな時間か、あっという間だったね。」
『穴があったら入りたい…。』
「バカなこと言わずにお昼にするよ。」
『うっす。』

二人は縁側に座り、宇随の嫁達が用意してくれたお握りを口にする。
少し大きめのお握りではあるが、時透は見かけによらず大きな口を開けてお握りにかぶりついた。

「やっぱり痣の発動が原因で燃費悪いの？」
『多分…燃費の悪さは解消されたかと思ったんだけどなぁ。』

項垂れるAに時透はお握りを飲み込むと、日ごろ思っていた彼女の欠点を口にした。
2人は同い年なだけあって本音でこうしてお互いのいい所と悪いところを言い合ったりするまでに時間はかからなかったのだ。

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