宇髄さんの所のお弟子さん

音 ページ27

柱稽古が始まって2日が経った頃、Aは走っている隊士の中で目立った髪色の男を見つける。

『あれ…あの髪の毛って…善逸？』
「あ？本当だ、アイツ派手な頭しといて地味に頑張ってるじゃん。」

地味過ぎてわからなかったわ、と耳をほじくりながら善逸の様子を見ていた。

『ちょっと声かけてきますね！』
「あ？おぉ。」

Aはどこか嬉しそうに善逸の所へお握りと竹の水筒を持って駆け寄ったのを見て宇髄は“アイツ無自覚なの？”と眉間にシワを寄せるのだった。

『善逸！』
「え？な！Aちゃん⁉何でAちゃんがここに⁉しかもおにぎりと水筒持ってるのぉ⁉」
『そりゃ私柱だもん、え？知らない？』

あ、そこ爆薬あるから避けてね。と指示しながら善逸の横を着いて走る。

「えぇえっ知らないっ知らないっ！嘘っええぇええ⁉いつから⁉いつからなのぉ⁉」
『いや煩っ、むしろ知らない事が不思議でならんですけど私。』
「だって俺、この稽古にだって参加したのは今日からだし、それまで長期任務だったし…って、Aちゃんの腕のその組紐どこかで…。」

善逸がAの左腕についてる組紐をどこかで見たなと思い出してみる。

「あ！そうだ！炭治郎が付けてたのと同じやつだ！」
『ーっ‼』

突如耳に入った音に善逸は驚きを隠さないでいた。

「え、嘘…Aちゃんぐむっ⁉」
『み、見るなっ！』

Aは立ち止まると、今までに見た事がない程に顔を赤くして善逸の口にお握りを押し込み、左腕は背後に隠されてしまう。
口元を右手で隠していて、その姿に善逸は可愛いなと思いながらもそうさせている相手が自分じゃないと思うと胸が苦しくなった。

口元のお握りをどうにかしなければこのまま窒息してしまうため、近くの木の下に移動する。
なんとかお握りをたべながら善逸は考える、何故炭治郎だけ何故いつも美味しい思いをするのかと、善逸の黒い部分が揺れ動く。

「でもアイツ、誰にでも優しいからなぁ。」
『そう、だね。』
「前だってカナヲちゃんの手握ったり頭撫でたりしていい雰囲気だったよ？」
『…う、ん。』

聞こえてきたのは嫉妬の音なんかじゃなくて、まるで安心していながらも、どこか寂しそうな音。

「炭治郎ってば本当いい奴過ぎて困るよなー？」
『それが、彼の良いところだし…悪い所だから。』
「Aちゃんは炭治郎がす「なぁにサボってんだこの塵！」

突如背後から割って入ってきたのは本当に塵を見るような目を善逸に向けた宇髄だった。

冨岡さん→←柱稽古(挿絵あり）

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