藤襲山 ページ9
『ハァ…ハァ…』
藤襲山に来て四日目の夜を迎えた。
もう何体鬼の頚を斬ったのか、100を超えた辺りから数えるのを辞めた。
傷はないものの、被ってしまった鬼の血に気持ち悪さを覚える。
『(早く帰って杏寿郎を抱きしめたい…。)』
頭の中は常に愛する弟の事でいっぱいで、ちゃんと寝れているかなとか、泣いてないかな?とか。
『あぁ…癒されたい。』
鬼の頚を斬りながらAは目的地へと足を向ける、例え同胞が腹わたを鬼に喰われていようが、道中屍がいくつも転がっていようが彼女にはどうでも良かった。
…ただ、思う事が一つあるとするならば、彼らが自分にとって無価値な存在だったぐらいか。
「たっ、助けてくれぇっ!!」
『…。』
しかし偶然にも進行方向に鬼が見え、その足元には刀が折れて助けを求める人が1人いた。
別に助けるつもりなんてないし、動けていない人に興味はなかった。
そのまま喰われてしまえばいい、そう思っていたのに・・・ー
「頼むっ俺には弟がいるんだっ俺がここで死んだら弟が1人になっちまう!」
『っ!』
その言葉がAの足を止め、鬼が振りかざす爪から服を引っ張り助けたのだ。
「っえ。」
『ねぇ…私にも目に入れても痛くない可愛い弟がいるんだけど、話を聞いてくれる?』
「きくっ!聞くからっ!」
『…ムフフ。』
恐らくこの山にきて初めて笑みを浮かべたAは少年を木の根元にそっと下ろして話を始める。
『この前なんだけど、弟が・・・ー』
「えっそれ今聞かないとだめ!?鬼迫ってるんだけど!?」
『…。』
Aは煩わしそうに後ろを振り向くと確かに鬼が近くまで迫っていた。
しかし慌てるそぶりを見せるわけでも無く、少年が悲鳴を上げる最中いとも簡単に鬼の頚を落とし、ゴロンと2人の足元に転がった。
「うそんっ、君そんなに強いの!?」
『強いとか弱いとかわからない、弟を守る為ならなんでもできる…それだけのはなし。』
「ほ、本当に弟さんが大好きなんだねっ!」
『じゃなきゃ鬼殺隊に入りたいなんて思わない。』
「そ、そっかぁ!俺は茂利、君は?」
『…A、煉獄A。』
そっと微笑まれた水晶のような瞳に茂利の顔が赤くなったのは言うまでもなかったと同時に、彼女と交わした約束に苦しむのはまた先のはなしである。
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あまね(プロフ) - 続き気になる! (9月29日 0時) (レス) @page50 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーたん(プロフ) - meさん» いつも読んでくださりありがとうございますっ!!少しずつですが完結まで頑張っていこうと思います! (2020年10月22日 15時) (レス) id: 3f898f19d6 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - 右の星を押したら既に投票済みでした..いつも楽しく読ませてもらってます!続きもがんばってください! (2020年10月22日 12時) (レス) id: 47178bfabc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴーたん | 作成日時:2020年5月13日 14時