好き、やねん。 (ページ10)

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君のこと、何も知らない。M.ll ページ10

生徒×他校生徒(前作の続きではないです)

いつもの駅、いつもの改札、いつものホーム。
普段と何も変わらない朝。
向かいのホームや隣を見れば同じように学校へ向かう学生や仕事へ向かうサラリーマン。誰もが浮かない顔をしているこの時間。
だけど私は今日も笑顔で電車を待ち侘びている。

今日も。
今日も、彼はいるかな。

ガタンガタン、と走ってきた電車のスピードが落ちてドアが私の目の前で止まる。
昨日と変わらぬ車両に足を運べば、昨日と変わらぬ席に彼が座っていた。

パチっ、と目があってお互いに会釈する。
どちらかが話しかけるわけでもなく、勿論会話が生まれるわけでもない。
細身で白い肌を制服から覗かせる彼の向かいの席に座って学校の最寄りの駅まで電車に揺られる。

"次は、○○、○○です。"

感情の特にこもっていないようなこのアナウンスもあの日からは聞きたくないな、なんて思ってしまう。そんな私の気持ちは今日も虚しく目的の駅に到着してしまった。
電車から降りる為立ち上がり、ドアに向かう。
が、その前にひとつ。向かいに座る彼にもう一度会釈をする。
スマホに目を落としていた彼が目線を上に上げて、私に会釈してくれる。
ただの挨拶。そこに感情は動いていないとわかっていても少し嬉しくなる。
今日も頑張れそうだなあ、なんて乙女チックなことを思いながら電車を降りた。

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