好き、やねん。 (ページ41)

今日:28 hit、昨日:129 hit、合計:45,295 hit

. ページ41

涙を溢す私を見て、彼はティッシュを取り出して私に渡してくれた。

受け取ろうとして、辞めた。

でもやっぱり、受け取った。

でもやっぱり、そのティッシュで涙は拭きたく無かった。

拭きたくなくて、一切汚れのないまっさらなティッシュをビリビリに破いて丸めて、ゴミ箱に放り投げた。

ゴミ箱には入らなくて、地面に落ちた反動で丸めたティッシュがふわっと広がった。

「だからもう、将企さん……リリーさんとは会えない。ごめんね。連絡先も消してくれていいし此処にある荷物も全部捨てといてくれていいよ。今までありがとう。じゃあね。」

『待って、………っ。』

立ち上がった私の腕を即座に掴む彼。
そのまま抱きしめられる私。

『ごめん。ほんまごめん。』

「どうしたの、？謝らないでよ、悪いのは全部私なんだよ。」

『俺が謝りたいんよ、。なぁ、俺のこと嫌いになった？嫌いよな、そりゃ。……ごめん、こんなことして……。』

聞いたこともない弱々しい声でそう言った彼は抱きしめていた私をそっと離した。

『一個だけ、聞きたいことがある。』

「うん、別に一個じゃなくてもいいけど。」

『お笑いのこと、……芸人のこと、嫌いになった、？』

「お笑いのこと……？

……そんなの、今も好きだよ、？」

『なら、…良かった。俺のことは嫌いになってもお笑いのことは嫌いにならんで、。』

「………うん。見取り図の漫才、大好きだよ。これまでも、これからも。

私、将企さんとはもう会えないけど、リリーさんになら会える気がしてるから。………それじゃあ。」

最後にそう告げて、私はマンションを飛び出した。

もう、私がこのマンションに足を踏み入れることは無かった。