好き、やねん。 (ページ40)

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『A、ネイル変えた？』
「うん、変えたよー。」
『前のも良かったけど今のもかわええな。』
「ほんと？ありがとー。」

誰が私なんかのネイルなんて見てるんだろ。
この世に大勢の人が生きている中で私がネイルを変えたことに気づくのはきっと貴方が最初で最後だよ。

『今日Aなんか元気無い？それかやっぱ疲れとる？』
「ん？うーん、まぁちょっとだけ。」

ネイルに気づける視野の広さと、元気の無さに気づく優しさと、すぐにかわいい、と言うその精神。

全て、全て、偽ってることぐらいわかってるから。

『………なんで、そんな今日目合わせてくれんの？いつも目見て話してくれとったのに、』

そう言って顎に手を添えられその手によって顔が彼の方を向く。

少し寂しいような、拗ねたような。
あどけなさを含んだ表情の彼はそのまま私に口付けをした。

ああ、やっぱり私も彼を嫌いになることなど、決して出来ないのだ。

「将企さん、」

『……ん、？』

「私、今日でここ来るの最後にするね、」

『……………理由は？聞いてもええんやったら、』

「私が、将企さんのこと、嫌いになれないから。」

『それはなんの問題があるん？』

「でも、将企さんは私のこと好きになれないでしょ？私の一番は、将企さんだよ。でも、将企さんの一番に、私はなれないから。」

「ごめんね、私、性格良く無いんだ。将企さんの幸せを祝えたら良いんだけど。将企さんの幸せが私の幸せだ、なんて生温い綺麗事言ってらんないの。」

「私にとって、将企さんは代わりが利かない。
将企さんに会いたい時は他の男なんて興味ないし、他の男で満足できるはずもないの。でも、将企さんにとっての私の代わりなんて、いくらでもいるでしょ？

さっきの、キス。私以外の女にだって、何も思わず、するんでしょ。」

泣くつもりなんて一切無かった。
弱みなんて、一切見せたく無かった。
少しでも見せたら負けだと思った。

でも、無理だった。
自分って人間が、意外にも脆くて、弱いことを知った。
悲しくて涙が出てくるか弱い私、女の子らしさ全開すぎてほんと気持ち悪い。