好き、やねん。 (ページ39)

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『A、何しとったん。』

「なんでいるの、？………将企さん、。」

『なんでって、…絡まれたとか言うからやろ。いつも予定時間のちょっと前には絶対間に合わせてんのに。居て欲しくないん？』

そうだよ、居てほしく無いよ。
なんで居るの。
なんで、なんで。

なんで、こう言う時にだけ優しくするの。
いっつもそうだったよね。その偽りの優しさがこれまで毎回毎回私を苦しめてるの。
なんで、気づかないの？

だから今日、私はこの関係を終わらせに来たの。

「そんなことないよ、ありがとう。ごめんね。寒いから中入ろう。」

溢れそうになる涙を堪えて笑顔を作り彼の手を握る。
握った彼の手は冷たかった、そう言おうとしたけれどそれ以上に自分の手が冷たくて驚いた。

『手、冷た…。こんな時間にあんまうろうろせんとって。』

そう言いながらエレベーターに乗り込み、私の両手が彼の両手に包み込まれる。

色んな女の処をうろうろしてばっかの人にそんなこと言われたってなんの説得力も無い。

彼に促されて部屋にお邪魔する。
これで何度目だろうか。

元はと言うと、きっかけは本当にただの私の思いつき。
誰、とかは特に無いけれどお笑いという文化そのものを広く好きでいた私が何処からか聞きつけた噂。
見取り図のリリーって人は女遊びが激しくて、女の子からのDMは全部反応してるんだって。

誰が流したのかも知らないし何処で聞いたのかも一切覚えてないけれど。
なんなら、私がDM送ったことすら私自身覚えてないんだけど。
気づけばふたりで会うことになっていて見返した時、自分どうせ酷く酔っ払ってたんだろうなと思った。
でも、なんか別に断る意味も無いし今更断るのって相手に迷惑じゃない？って都合よく解釈した私がいて、この関係が始まった。

最初は、一回会って終わりでいーやって生温い考えしてた。
彼に初めて会って、私は知る。
簡単には離れられない人だと。

気づいて欲しいことは全部気づいてくれるし、かけて欲しい言葉は全てかけてくれる。
女遊びが激しいなんて悪めのイメージ承知の上で会ってるんだから、そうなれば好感度は上がってく一方というか。
嫌いになれる唯一の要素を知ってしまっているから。
もう、誰も彼を嫌いになることはできない。