好き、やねん。 (ページ34)

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「阪本とふたりきりは何気に久々ちゃう？」

『…確かに。』

俺はずっとふたりで行きたいと思ってたけどな、と口に出せる訳の無い言葉を心の中で呟く。

この前Aを誘ったあの日から随分と時間が経ったが未だなんの進展も無し。

まあチキって何も仕掛けれてない自分が理由だと考察するのは容易だ。

あー、あん時は肌寒かったのにもうあったかなってきてるやん。アウターミスったかな。

肩を並べて歩きながら、特に中身の無い話を繰り返し、彼女が「あ」と声を出すので何かと耳を傾ければ、「あれ見て」と一言。

「桜もう咲きそうやで。……春やなぁ。」

なんて嬉しそうに言いながら写真を撮ってるAの横顔を、そっと心のカメラでシャッターを切って目に焼き付け保存する。

その瞬間、春風が揺らす彼女の髪が、太陽に当たって茶色っぽくなる。

しっかり自分の中で意識しておかないと知らぬ間に「かわいい」と言ってしまいそうな自分がいた。