好き、やねん。 (ページ31)

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きっと阪本も好き、とまでは行かなくてもAさんが付いてくださるのがとても嬉しいんだろう。実際Aさん居る時楽しそうやし。

それは俺も同じなのだが恐らく俺は阪本とは違って作家としてのAさんだけでなく1人の女性としてAさんを好きになってしまっている気がする。そうなってしまっては手伝ってくださっても助からない。心臓が。

最初はただかわいくて明るい子やなぁって思ってただけやった。
でもその明るさも第一印象の為の、とかでは全然無くてどんな時でも元気いっぱいでお話してくれるし、それでも仕事はエグいぐらい素早くこなしちゃうし。だけどやっぱりどこか抜けてるとこもあったりする。
そして何より気配りの塊である。ほんの些細なことにもすぐ気づき知らぬ間に行動してくださっている。

最終的には

兎「なんかお前いいことあった？好きな人でも出来たんちゃう」

なんて相方のたまに出る謎の勘の良さを発揮させてしまう始末。

好きになってはいけない存在とかよく聞くけど実際好きになったものへの愛ってそんな簡単に止められるもんじゃない。
うーん、どうしたもんかなぁと気分転換に自販機へ向かった。

もう昼だけどコーヒーでも飲もうかなぁ。
あれ、誰か先客がおるんか。ちょっと待っとこうかなって、………Aさん、？？

「あ、堂前さーん！こんにちは！阪本さんから聞きました？またロコディさんのお手伝い行けることになったんです！」
『あ、さっき聞いたよ〜めちゃくちゃ助かるわありがとう〜。』

そんな、＂待ってました＂みたいな、＂会えて嬉しい＂みたいな声色で俺の名前を呼んでもらっては困る。「行けることになった」て、めちゃくちゃ喜んでくれてるし。

「なんか………懐かしくないですか？」
『ん？何が？』
「いや、……堂前さんと初めて出会ったの此処でしたよね、？」
『あ〜確かに、言われてみればそうやね、！』

彼女の言葉であの日のことがフラッシュバックする。

あの日と未だ変わらない距離感。
抜けない敬語と、苗字にさん付け。

変わったことと言えば俺の気持ち、ぐらい？