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阪本side
「うん、ありがとう」
彼女がそう言って中々見せない柔らかな笑顔を俺に向けた瞬間に、心臓がドキン、と音を立てた気がした。そしてそれと同時に顔が熱を帯びて行くのが自分でもわかる。
Aがおらんくて助かったと安堵しながら本来の目的を思い出し慌てて自販機に金を入れた。ボタンを押して自販機の前に屈むと、そこには何故か自分の買っていないお茶が入っていた。
『お茶……？俺押し間違えた？』
そんな自分あほやったんかと少し落ち込みながらお茶を取り出すと、自分が押したと思い込んでいた缶コーヒーが上から落ちてきた。
もしかしてこれ、アイツのか。
楽屋に戻る途中で相方の中谷になんでお茶とコーヒー同時に買ってんねんと笑われたが、好きなやつに微笑まれた後に意図せず好きなやつの役に立ててる自分が嬉しくて上機嫌だったので無視して楽屋に戻った。
Aの荷物が置いてある机にお茶を置いて自分の椅子へ戻る。
にしてもアイツ、自分で買ったお茶忘れるぐらい急いでるってドラッグストアにそんな大事な用があるんか？
買ったばかりの缶コーヒーを口に含みながら昨日のことを思い出す。そういえば、Aが俺の誘い断んのまあまあ珍しいか…。
あの時はただただ悲しさがバレないようにとそそくさと楽屋から出て行ってしまったあまりAの表情や様子がわからんかった。
なんかあったんかな……。
谷「………本！…阪本！！」
『…ん？ああ、谷やん。ごめん。』
谷「いや別にええねんけど。せり知らん？」
『ああ、Aならなんかさっきドラッグストア行っとった。まだ帰ってきてへんのか…。』
ドラッグストア普通に行くだけならこんな時間かからん気がするけど…。それだけで変に連絡とかすんのもおかしいか、
Aとのトーク画面を開くだけ開いたままにらめっこをしていると、楽屋の扉が開いた。
振り返ると、そこに居ったんはAやった。
Aやったけど……あまりに顔色が悪すぎる。
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作者名：かどき | 作成日時：2024年1月22日 18時
