94 ナイトキャップ ページ45
*
紫耀くんの気持ちは
紫耀くんの心にだけ存在している。
ただそれだけなんだ。
ねぇ、私は何も知らないんだね。
だから全部、貴方に教えてほしい。
目の前の笑顔が眩しくて
衝動的に、自分だけのものにしたくなって
紫耀くんの首元に手を回して、飛びつくように抱きしめた。
その香りを吸い込むと
いろんなことが頭を駆け巡っていった。
.
勇太。玄樹くん。ナナセさん。
ありがとう。
私、幸せになるよ。
.
紫耀「いきなりどうしたん？」
「………分かんないけど。……………好きだなぁと思って」
紫耀「俺、守るから。大切にするから。
……………ほんまに、好きや。」
私を優しく包み込む手が、
その言葉をそのまま現しているようだった。
どちらからともなく体を離せば
また距離が縮まって
触れた唇と唇。
温かくて、心地よくて、優しくて。
紫耀「A、そこ座って」
いつもの定位置。
紫耀くんに腕を引かれるままカウンターの端に座ると
彼は慣れた手つきで、並べられたリキュールを手に取る。
グラスの中身が色を変えていくたびに
あの色に、近づいている気がした。
.
紫耀「はい、どうぞ。」
真っ赤なカクテル
目が離せなくなる鮮やかさ
Burning in my heart
ねぇ、この気持ちはお揃いだね？
そっとグラスに口をつけようとした途端
紫耀くんは口を開いた。
紫耀「それ、今日のナイトキャップ。」
「何それ………、帽子？」
紫耀「確かにそのナイトキャップもあるけど(笑)
…………それやなくてさ。」
「………うん。」
紫耀「寝る前に飲むお酒のこと。」
紫耀くんは私の目の前のグラスを
カウンターに置かれたままの状態で少しだけ揺らした。
「なんかそれ、もったいないかも。」
紫耀「………え？」
予想外。って言わんばかりの紫耀くんの表情。
「だって、そしたらいつまでもとっておけないじゃん」
見ているだけで脳に焼きつく赤色を
このままずっと、見つめていたいと思ったから。
これから眠りにつくなんて
そう思ったら、
うまく言えないけど寂しくなるよ。
*
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蘭(プロフ) - ものすごく面白かったです！！勇太が自分から悪役になって主人公の女の子を送り出すのが本当に泣けました！ (2019年8月25日 4時) (
レス) id: f0c1e98991 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - めっちゃ泣いちゃいました！おもしろかったです(^-^) (2018年5月31日 8時) (レス) id: a62c72f2bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぴ - いろいろ感動しました。すごく、おとなぽっくてかっこいい作品でした。 (2017年8月24日 12時) (レス) id: 1413602191 (このIDを非表示/違反報告)
樹里亜(プロフ) - とっても大好きな作品でした。私好みすぎて… これからも頑張ってください！ (2017年7月12日 0時) (レス) id: cc2f6a9c78 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - CHI-NAKAさん» メインではない登場人物の性格や言動もこだわって書いているのでそう言っていただけるとすごく嬉しいです！ありがとうございます(>_<)！！！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 6707e6f3bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音
| 作成日時：2017年4月15日 20時
