93 心 - Sho - ページ44
*
【 Sho 】
『私ね……………
あのネックレス、なくしちゃった。』
「……………え？」
『紫耀くんがくれた、ネックレス。』
さっきまでのAの涙は
今ではもう哀しみの色しか帯びていなかった。
そして
故意に落としたわけやなかったって言う事実に
めちゃくちゃに心が軽くなった。
でもその瞳は
割れたグラスを見つめるAを鮮明に思い出させる。
.
" 紫耀くんが私にくれた気持ち
嘘みたいで、信じられなくて、
だけどこんなふうに割れてなくなっちゃったら
……………本当に嘘になっちゃうみたいで
紫耀くんの気持ち、流れていっちゃうみたいで……… "
.
誰かを好きになることを
誰かに愛を注ぐことを
これまでずっと知らんかったから
Aは心を繋ぐその意味を知らない
やから、物に縋る。
悔しそうに唇を噛み締めながら
何もない自分の首元に手を置くAは
きっとそこにあったネックレスという物でしか
心を繋ぎとめられんって思い込んどる。
そんな気がした。
.
「何回でも、俺の気持ちあげるって言うたやろ？」
『……………え？』
俺は、ポケットの中に大事にしまい込んだ
そのネックレスをAの顔の前に持っていく。
それを認識した彼女は、目を見開いて驚いていた。
「落ちてた。店の前に。」
『えっ………』
「あの話、聞いてたんやろ？………ごめんな」
こんなちっぽけな謝罪で
彼女の心が軽くなるとは到底思えへんけど
ただ、もう泣かせたくなかった。
『じゃあ、落としたの……………私？
紫耀くんへの気持ち、捨てたの、私……………？』
また哀しみを帯びるその目に
俺まで胸が苦しくなってきた。
「なぁA。」
そのままの瞳で俺を見据えるAに
いちばんに伝えたいこと。
「もしそれがなくなったとしても
俺の気持ちは絶対になくならんよ。
グラスが割れたって、カクテルが流れたって、
俺の気持ちはなくならんし、どこにも行かへん。
だって、」
Aの手を取って、自分の左胸に押し付けた。
「俺の気持ちは、ここにあるんやで？」
『………紫耀、くん。』
「俺のこと、信じてて」
彼女は揺れる瞳で小さく頷いて
その瞬間に、頬に涙が一筋だけ伝った。
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蘭(プロフ) - ものすごく面白かったです！！勇太が自分から悪役になって主人公の女の子を送り出すのが本当に泣けました！ (2019年8月25日 4時) (
レス) id: f0c1e98991 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - めっちゃ泣いちゃいました！おもしろかったです(^-^) (2018年5月31日 8時) (レス) id: a62c72f2bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぴ - いろいろ感動しました。すごく、おとなぽっくてかっこいい作品でした。 (2017年8月24日 12時) (レス) id: 1413602191 (このIDを非表示/違反報告)
樹里亜(プロフ) - とっても大好きな作品でした。私好みすぎて… これからも頑張ってください！ (2017年7月12日 0時) (レス) id: cc2f6a9c78 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - CHI-NAKAさん» メインではない登場人物の性格や言動もこだわって書いているのでそう言っていただけるとすごく嬉しいです！ありがとうございます(>_<)！！！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 6707e6f3bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音
| 作成日時：2017年4月15日 20時
