89 誰かの為に ページ40
*
紫耀くんは私の体を離して、じっと目を見据えてきた。
紫耀「………顔、もっとよく見せて」
「やだよ………ぐちゃぐちゃ」
紫耀「そんなんええから。」
自然と引き寄せ合って、触れる唇。
求めるようについばまれる感触に、体温が上がった。
.
紫耀「何かされへんかった………？」
そして、私の体をゆっくり撫でる大きな手。
だけどね、
違うよ。紫耀くん。
勇太はね……………
扉の向こうに背を向けていた勇太と目が合った。
変わらないいつもの柔らかな顔で微笑んで
彼の唇は音を漏らさずに
" 言わないで " と呟いた。
「……………っ、」
その優しさに少しでも何かを返したいのに
勇太はそれさえもさせてくれない。
私の幸せの為だけに
勇太は悪役になろうとしている。
勇太「はやく、連れてけば」
わざと冷たく言い放って、
さっき閉まったばかりの扉を無造作に大きく開けた。
その向こうからは、眩しい光が漏れる。
紫耀くんは一瞬動きを止めて
その目で勇太をじっと見つめた。
紫耀「おまえ……………」
勇太「なんだよ」
紫耀「………っ」
勇太「なに、おまえも監 禁されたい？」
紫耀くんはその言葉には何も返さず
私の腕を強引に引いて、光の漏れる先へ向かった。
去り際に見えた勇太の横顔は
いつも私を包み込んでくれていた、あの笑顔だった。
ねぇ、私
勇太にどれだけ言えば伝わるのかな。
「……………ありがとう」
噛みしめるように、
" 届け " と願いながら
彼に投げた言葉。
勇太はやっぱり、笑った。
*
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蘭(プロフ) - ものすごく面白かったです！！勇太が自分から悪役になって主人公の女の子を送り出すのが本当に泣けました！ (2019年8月25日 4時) (
レス) id: f0c1e98991 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - めっちゃ泣いちゃいました！おもしろかったです(^-^) (2018年5月31日 8時) (レス) id: a62c72f2bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぴ - いろいろ感動しました。すごく、おとなぽっくてかっこいい作品でした。 (2017年8月24日 12時) (レス) id: 1413602191 (このIDを非表示/違反報告)
樹里亜(プロフ) - とっても大好きな作品でした。私好みすぎて… これからも頑張ってください！ (2017年7月12日 0時) (レス) id: cc2f6a9c78 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - CHI-NAKAさん» メインではない登場人物の性格や言動もこだわって書いているのでそう言っていただけるとすごく嬉しいです！ありがとうございます(>_<)！！！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 6707e6f3bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音
| 作成日時：2017年4月15日 20時
