51 心の行方 ページ1
*
眩しい光が、目を閉じた瞼の奥にまで突き刺さってきて
私は目を開けた。
見慣れないその部屋の壁は
四方すべてが真っ赤に染められて
ふかふかのベッドに沈む体は、どこか重たい。
頭がズキズキと痛みながらも
昨夜の記憶が少しずつ蘇ってくる。
隣に目をやると
そこにいるのは勇太だった。
裸のまま布団を被って
長い睫毛を伏せて寝息を立てている。
歩くこともままならないほど酔わされた私は
勇太に抱えられたまま、おもむろにホテルに入って………
" ごめん "
そう言って泣きそうな顔をした勇太が
突然、鮮明に頭の中に浮かんできた。
だけど、勇太の隣に寝そべっている今でも
いちばんに頭の中を支配するのは
他の誰でもなく、紛れもなく、紫耀くんだった。
好き、と言った紫耀くんの声のトーンが、抑揚が、
何もかもが忘れられなくて、何度も頭の中で繰り返される。
勇太「ん………A？」
ボーッとしているうちに勇太は目を覚ましていて
眠そうに溶けるその瞳と視線が絡んだ。
「………おはよう」
勇太「………はよ、」
昨日のことを思い出すと
私は勇太にどんな顔を向ければいいのか分からなくなって
思わず目を背けた。
勇太も何も話さないから
沈黙がすごく気まずくて
私は立ち上がる。
勇太「待って」
「………っ」
腕を掴まれて
ほぼ同時に、肩にふわりと毛布が掛けられた。
勇太「ちゃんと話したい」
掠れたような、震えたような声。
勇太に体の向きを変えられてまた目が合うと
少しも揺るがない彼の瞳に、射抜かれた。
「うん………。私も。」
ごめんね
昨日、私は確信した。
紫耀くんから離れることはできなくて
勇太を好きになることもできない。
こんなに都合のいい私を
どうか許してください。
*
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蘭(プロフ) - ものすごく面白かったです！！勇太が自分から悪役になって主人公の女の子を送り出すのが本当に泣けました！ (2019年8月25日 4時) (
レス) id: f0c1e98991 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - めっちゃ泣いちゃいました！おもしろかったです(^-^) (2018年5月31日 8時) (レス) id: a62c72f2bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぴ - いろいろ感動しました。すごく、おとなぽっくてかっこいい作品でした。 (2017年8月24日 12時) (レス) id: 1413602191 (このIDを非表示/違反報告)
樹里亜(プロフ) - とっても大好きな作品でした。私好みすぎて… これからも頑張ってください！ (2017年7月12日 0時) (レス) id: cc2f6a9c78 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - CHI-NAKAさん» メインではない登場人物の性格や言動もこだわって書いているのでそう言っていただけるとすごく嬉しいです！ありがとうございます(>_<)！！！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 6707e6f3bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音
| 作成日時：2017年4月15日 20時
