堕ちた椿と髑髏 十一 ページ34
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貴「只今帰りました…」
そう言いながら屋敷の扉を開けたが、誰からも反応は無かった。屋敷の殆どの者は軍務に所属しているし、そうでない者も神事がある。広大な土地に、広過ぎる屋敷を持っているが使用人は一人も居ないから、今夜は私一人だけの夜のようだ。
人の温もりが感じられない、冷たい廊下に自分の足音だけが響く。燭台の上の蝋燭の灯りがちらちらと揺れているのを視界の端に捉えながら、独りで自室へと向かった。心臓の辺りがくり抜かれてしまったような、ぽっかりと穴の開いてしまったような寂しさをじんわりと実感する。どうやら、自分の中で彼等の存在は既に「当たり前」と化してしまったと云う事に気が付き、心の中で静かに自嘲した。
そんな事をぼんやりと考えていると、いつの間にか一番奥の部屋に行き着いた。先日トントンに「入るな」と釘を刺された、開かずの間。余りにも惚けていた所為か、自室を通り過ぎてしまったようだと頭を振ってまた廊下を引き返す。
然し、行き着く先はまた同じだった。
何度引き返しても、開かずの間に辿り着いてしまう。壁の灯りの蝋燭の炎も、飾り立てられている調度品も、全てが同じような光景で繰り返される。まるで抜け出せない悪夢に浸っているような感覚だった。
これは、此の部屋に入らなければいけないのだろうか。
ふとそんな考えが脳裏をよぎった。
此の部屋に立ち入る事は禁止されているが…このままでは一向に埒があかないのも事実だった。
恐るおそる、扉の取っ手に手を掛ける。心成しか指先が冷たく震えている感覚がした。
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小蝶(プロフ) - 匿名。さん» 初めまして、コメント有難うございます。まだあまりd!さんメンバーが登場させることが出来ていなくて…僭越ながら、これからも本作品を楽しんで頂けるように頑張っていく所存です。匿名。様も良いお年をお迎えください…! (2018年12月30日 21時) (
レス) id: 005eaac628 (このIDを非表示/違反報告)
匿名。(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。お話の雰囲気がとても素敵で物語に引き込まれてしまいました…！まだ出てきてないメンバーと夢主ちゃんが今後どの様に絡んで行くのかすごく楽しみです…！更新頑張ってください、良いお年を！ (2018年12月29日 18時) (レス) id: f847969bca (このIDを非表示/違反報告)
小蝶(プロフ) - 鈴蓮さん» 初めまして、コメントありがとうございます。雰囲気が好きって言われるの、とても嬉しいです!更新は不定期になりますが、これからも頑張っていく所存ですのでお付き合い頂けたら幸いです。 (2018年11月25日 13時) (レス) id: 005eaac628 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蓮(プロフ) - コメント失礼します！文章の雰囲気がとっても好きです……！これからも更新頑張ってください！ (2018年11月25日 8時) (レス) id: 4a95fce3d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小蝶 | 作成日時：2018年11月17日 21時
