「罠 1-1」アズール夢 ページ3
ここ数か月間に起こった多くの騒ぎは、私の人生を大きく変えた。
それがいい方にへと転がっているのか、悪い方にへと引きずり込まれているのかは分からないが、少なくともそれは私自身が変わってしまう引き金にもなっていた。
「…やってらんないなぁ」
誰もいない教室で一人ため息をついて、ギュッと拳に力を込める。
それに乗じて胸の奥から、得体のしれない何かが這い上り、喉を殺す。
息が出来なくて、ずっと苦しい。
魚が地上では息が出来ないように、私は異世界で生きる術を見つけられない。
このまま、ずっとここに居たらどうなるのだろうか。
そうした小さな不安が、インクの染みと化し、私の心を染めていく。
助けての声は誰にも届くことはない。
はっはっと息を荒くして、小刻みに空気を肺に入れ始める。
それで落ち着くことは無いにしても、そうしろと言わんばかりに身体が動く。
「おや、貴女は…って大丈夫ですか？」
いつの間にか人が来ていたのだろうか。
涙で靄がかった視界に、ぼんやりと一つの像が揺らめき、
音をかき鳴らしながらこちらへと迫っていた。
「さぁ、ゆっくり息を吐いてください。」
にゅっと伸びた影に導かれるまま、背中をさすられ、合わせるように息を吐く。
１、２…。そうして押し出すように数を数えていると、だんだん呼吸が落ち着いていき、
気付いた時には、嫌になるぐらいに、はっきりと輪郭を成した周りの風景が目に飛び込んでくる。
上を見上げると、眼鏡をかけたその男の人は、ニコッと見せつけるような笑みを浮かべて、
蛇が絡むかの如く、私の頬へと指を這わした。
「落ち着いたようですね。良かったです」
寒気がするほど爽やかな調子のその男の名は“アズール・アーシェング・ロット”
その仕草一つ、一つに安心できないのは、きっと彼が彼であるが故だろう。
「ご迷惑を、おかけしました」
丸めた背中を正すことなく頭を下げると、上から適当な慰めの言葉が飛んでくる。
「迷惑だなんて、そんなそんな」
そんな気遣う言葉とは裏腹に、彼はそのまま私の顎をつかんでは、無理やり上へと持ち上げ、首が痛む。
「僕、貴女の事が心配なんですよねぇ」
傍から見てたらただの脅しのような体制で、彼は吐き気がするほどの甘い言葉を、
変わらぬ調子で投げかけてくる。
「どうしてそんな取り乱していたのか、教えてください。」
そして想定内の言葉も後に続いてくる。
「…まぁ大丈夫なので」
こうして人の弱みを握って一体彼は何をするつもりなのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天狐 - リクエスト失礼します、好きな人の為なら何でもするヤンデレリリアをお願いします。 (2020年9月1日 15時) (
レス) id: b3e855f7f6 (このIDを非表示/違反報告)
赤猫さん。 - リクエスト失礼します！ジャミルお相手で恋人設定でヤンデレジャミルのユニーク魔法に見事にはめられてしまった夢主ちゃんをお願いします！これからも疲れない程度に頑張ってください！ユニーク魔法大丈夫でしたかね…？ (2020年7月6日 20時) (レス) id: 8f1de045bc (このIDを非表示/違反報告)
☆アスカ☆(プロフ) - こんばんは！リクエストします。リドル相手で、恋人設定で、依存&ヤンデレ系をお願いします_(._.)_ (2020年5月13日 21時) (レス) id: bf7dd3bfe3 (このIDを非表示/違反報告)
虹野原 - このシリーズホント好きです!!これからも応援させていただきます! (2020年4月30日 20時) (レス) id: b53373c841 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - リクエスト失礼します 夢主に一目惚れして告白してフラれ、段々と病んでいってしまうリリア君をお願いします (2020年4月25日 23時) (レス) id: b3e855f7f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ていていて | 作成日時：2020年4月24日 0時
