【ツイステ】小さなワンダーランド3【短/中編夢小説】

「その時　1-4」ジャミル夢 ページ18

「へぇ、つまり元来た棺桶にもう一度入ってまた馬車を走らせれば帰れると」
「…は、はい」

重たい空気が圧し掛かる。

「(うぅ、辛すぎる)」
どうして、言わなかった
どうして俺を放って帰ろうとする
どうして俺を置いていくんだ
そんな恨みが指の仕草一つで伝わってくる。

「それで、君は元の世界に帰りたいんだな？」
「…まぁ、そりゃあ」
帰れるものなら色々と清算してから帰りたい。
それは彼とて分かっているはずだ。
「…それで、その清算に俺は含まれているのか？」
「…は、い」
だって、しょうがないじゃないか。
私は彼氏の為に、恋の為に全てを捨てれるほど青くはないし、勇敢でもない。
「正直俺は、君といつまでも一緒に居られると思っていた」
コップを置く音が響く。
何だかさっきからやけに喉が渇いて仕方が無い。

「まぁでもこういうのはお互いの気持ちだ」
「君が帰るまでは良い彼氏で居させてくれるか？」
「俺も、その時が来るまで君を大事にしよう」
だが、ひたすらに目線を泳がせた後の話の決着は意外とあっさりとしていて、拍子抜けしてしまった。
「良い、んですか？」
「良いも何も、君は帰ってしまうんだろう？」
フッと顔を綻ぼして、先輩は私を見つめる。
何処か、見覚えがある雰囲気。
嬉しいはずなのに、胸のざわめきが収まることは無かった。

「まぁグリムの為にも帰るタイミングは学園長と相談した方が良いとは思うが」
「ああ、そうだ一つお願いがあるんだ」
「君が帰る直前、俺に伝えて欲しい」
「俺は君とちゃんとお別れがしたいんだ」
「…はい、分かりました」
「有難うございます」

どうしてかあまり声がはっきりと出ず、少し震えたか細いお礼を伝えると、
ジャミル先輩は彼氏じゃないか、とまたやけに優しく微笑んだ。

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