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第23話 ページ24

あの人達と別れて半日ほど歩いて行くと嫌な印象の道に出てきた。
Aは顔を(しか)める。
それに桜ノ夜叉が反応する。

「あぁ、君のお兄さんがこの近くで亡くなってたんだね。」

「そうだよ。」

苦しそうに彼女は答える。

不思議と脚がそちらの方に向いて行く。
強まっていく吐き気を(こら)えて、彼女はそこに辿り着いた。

当たり前だが今は何も無い。
死体も血痕(けっこん)も………。
ただアスファルトがあるだけである。

それでもAは鮮明に思い出す。
死んだ兄を見つけ出した時のことを。
唯々泣いていた。悲しくて悲しくてどうしようもなくて泣いていた。
そこで、

「そう言えばあの人の名前聞いてなかったなぁ。私も名乗って無いけど。」

と、どうでも良いことを思い出し、口にする。

「まあ良いや。」

そう言いしゃがみ込み、兄がいた場所に手を置く。

「お兄ちゃん。私まだ生きてるよ…ミカも新しく来た優って子も………でもね、茜は、他のみんなは死んじゃったみたい。
あ、そっちで会ってるかなあ?」

なんて言って笑う。

「私………私…生きたいって欲があんまりないんだ。ダメだよねぇ?折角ここまで頑張ってくれたのに。
でも_____________。」

少しずつ思い出して来た記憶を思い出す。〈彼女〉として記録したものを。
〈彼女〉は生き長らえるために犠牲(ぎせい)にしてきたもの達を。

「でもね、今度は誰かを生かせてみたい。烏滸(おこ)がましいのは解ってる。
だけど、吸血鬼ってなかなか死なないみたいでさあ…私、吸血鬼だからね。
そんなに容易(たやす)く死なないから…(せい)を分けるって言うと違うものになっちゃうけど…………。
この我儘(わがまま)は許して欲しいなぁ…って。」

答えてくれる者はいるはずもなく風が吹くだけである。

「じゃあね、私頑張るよ!」

立ち上がり脚を踏み出そうとすると、肩を誰かがポンッと手を置いた感じがした。
振り向いてみると誰もいない。
正しく言うと、本当は誰もいないが兄がいる。

うん、行ってらっしゃい

と笑って見送ってくれている。

そんなものが見える。
これを医者に言ったら精神病だと診断されるんだろうと思いながら、

「ありがとう。」

と彼女も笑って返した。

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作品ジャンル:アニメ
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Roy(プロフ) - クローバーハートさん» 更新遅くて申し訳ありません!今までより少〜〜〜しだけペースをあげて更新していくつもりなので、気長にお待ち下さい!コメントありがとうございます(・ω・)ノ (2016年5月19日 18時) (レス) id: cff10b5516 (このIDを非表示/違反報告)
クローバーハート - やっと続きが見れるんですね〜!どんどん続きを続いて下さいね!小説読みたいから続きが気になってしょうがないんです〜!(ToT) (2016年5月11日 22時) (携帯から) (レス) id: d08ee1eb1c (このIDを非表示/違反報告)
Roy(プロフ) - ROM民さん» あら〜、ご指摘ありがとうございます(=゚ω゚)ノ今外しました! (2015年11月28日 19時) (レス) id: cff10b5516 (このIDを非表示/違反報告)
ROM民(プロフ) - はじめまして。「オリジナルフラグ」が外れていませんよ。二次創作ですので、棲み分けにご協力お願いいたします。 (2015年11月28日 19時) (レス) id: 67f8438bca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Roy | 作成日時:2015年11月22日 22時

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