七つ ページ8
じわじわと湿ってくるパーカーの裾を握り締めた。
雪がちらつく路地裏、時計屋の裏口から数歩分離れた地面に膝を抱えて座り、抱えた膝に顔を埋めていた。
最低なことをした。
一時の怒りに任せて妹に怒鳴るなんて、馬鹿としか言い様がない。
それでなくともただでさえ不安定だというのに、あの子は。
ぐずぐずと自責の念に浸っていると、不意に雪が止んだ。
ついさっき、裏口のドアが開く音がしたから多分そういうことだ。
「風邪引くよ、真尋」
顔を上げて答える気力もなかったのでそのまま無視していると、頭に手が置かれ、そのままくしゃくしゃと撫でられる。
「吹っ切れたら途端に萎れるね、真尋は。大丈夫だよ、君は悪くない」
一瞬本気で殴ってやろうかなんて思ったが、今はその言葉に甘えておくことにした。
でも、この人がそれだけで終わらせるハズはない。
「でも、君が解決しないといけない。分かるよね？」
ほら、また。
穏やかな語気のまま、諭す。でもそれは正論で、間違ってない。
「……分かってるわよ」
「だろうね」
顔を上げるといつも通りの笑顔の縋さんが黒い傘をこちらに掲げていた。
つくづく暇な店主である。
「そういえば、大丈夫？」
「何が」
「思い出してたみたいだけど、さっき」
その一言で思い出した。
悍ましいあの出来事、そしてこの人にとっても哀し過ぎたであろう出来事。
背筋に冷水を流し込まれた様な感覚と、込み上げる気持ちの悪さに顔を両手で覆った。
丸めた背中をあやす様に叩く手はどこまでも優しいのだが、たった今脳味噌の働きによって繰り返し、そして断片的に流れる映像の所為かそれともお蔭か、どちらにしろありがたくないことを思い出した私にとってはやるせなさしか与えない。
「……大丈夫？」
「…………多分。戻ろう、楓麻が泣きそうな顔してたし」
実際半泣きだったけどね、と苦笑する縋さんに同調して笑む。
その笑みがぎこちないことには多分気が付いている、この人は。
───────あのね、縋は……
私のことを、嫌っている。
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黒鯛焼き(プロフ) - 鈴木。さん» コメント・ご閲覧ありがとうございます。 描き方には普段から気を付けているので嬉しいです。更新頑張らせて頂きます！ (2014年12月11日 23時) (
レス) id: b19664867e (このIDを非表示/違反報告)
鈴木。(プロフ) - とても続きが気になります。書き方も丁寧で読みやすいですね。私も見習いたいです。何かと忙しいでしょうが、更新頑張って下さい。応援しています。 (2014年12月11日 23時) (レス) id: 3a94d7675b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒鯛焼き | 作成日時：2014年12月11日 1時
