十 ページ11
side R
ぴー、と甲高いのに不思議と耳に刺さらない音。私が吹くハーモニカが奏でる音。
『はい、あげる』
ぽん、となんでもないように手渡された四角い包み、中から出てきたのは薄桃色のリボンが緩く巻かれた銀色に光るハーモニカ。
自分もお金なんてないくせに、バイトを何個も掛け持ちして貯金して、やっとの思いで好きな本を買ってるのに。
4年前の誕生日、私の14歳の誕生日に3歳年上の姉がくれたもの。
吹き方なんて知らない、と言うと 似合いそうだったから となんとも不安を誘う返事が返ってきた。
すっかり手に馴染んだ小さなハーモニカを吹いている。昔からずっと。
唯一違うところは、私の目から涙が溢れているところだろうか。
＊
ただ、笑っていようと思った。
母に愛された記憶が私よりも少ないあの子を不安にさせないために、悲しませないために。
なのに、なぜハーモニカを吹くこの子は泣いているのだろうか。
「鈴、」
「……やっぱり、だめだった」
地面に座り込んで、腕を垂らして、項垂れて。
「私じゃだめなの、お姉ちゃんじゃないとだめなの。だってお母さん、もうどうしていいかわかんない」
「なんで私がいつまでもお母さんに縛られないといけないの。私が何したって言うのよ」
「なんだって、私の所為にされないといけないのよ」
ただ、笑っていようと思っていた。
＊
side S
「……ええ、っと」
「迷惑かけたのは分かってるわよ。でも今から家に連れて帰る訳にもいかないじゃない」
「や、そうじゃなくてね」
やっと一段落付いて、さあ本でも読もうかなんて考えた矢先に真尋がやってきた。そのまま手首を掴まれて引っ張り出されたのはいくらなんでも理不尽だと思うのだが。
ついこの前見たばかりの、黒い髪をショートボブに整えた少女は真尋の妹。
「あの子はなんで泣いてるの」
「……胸糞悪くなるだけの話だから聞かない方がいいかもよ」
＊
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黒鯛焼き(プロフ) - 鈴木。さん» コメント・ご閲覧ありがとうございます。 描き方には普段から気を付けているので嬉しいです。更新頑張らせて頂きます！ (2014年12月11日 23時) (
レス) id: b19664867e (このIDを非表示/違反報告)
鈴木。(プロフ) - とても続きが気になります。書き方も丁寧で読みやすいですね。私も見習いたいです。何かと忙しいでしょうが、更新頑張って下さい。応援しています。 (2014年12月11日 23時) (レス) id: 3a94d7675b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒鯛焼き | 作成日時：2014年12月11日 1時
