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次の日、目が覚めてすぐに感じた左手の暖かさに義勇がそちらに視線を向けると、目に入ったのはすやすやと寝息をたてているAの姿。
寒い思いをさせてしまったと飛び起きるも、ズキリと痛む腕に一瞬息がつまるのを感じる。
そうだ、腕に深手を負ったのだった、と腕に目をやればまだ少し出血しているのか、じんわりと赤くなっている包帯。
任務先で遭遇したAと似た背格好の鬼に、柄にもなく心を乱されてしまったのが原因だった。
「ん…、義勇さんっ」
寝ぼけているのか、勢いよく飛びついてきたAの背に手を回しながら、キラキラと朝日を反射して輝くAの髪に目を向ける。
吸い寄せられるようにその綺麗な髪に指を通すと、突然顔を上げたAと至近距離で目が合う。
「私、決めたんです」
何を?とは口には出さずにAを見つめれば、真っ直ぐな瞳で「私、鬼殺隊に入ります」などと口にするA。
鬼殺隊に入る?
そんな細い身体で?
怪我をしたらどうする?
最悪、死ぬかもしれないんだぞ。
色んな言葉が頭をめぐり、口をついて出たのは一言。
「…死にたいのか」
「いいえ。…奪われるばかりじゃなくて、私も自分で何かを護れるようになりたいんです」
「俺では、不足か」
「私が護りたいのは、義勇さんです。義勇さんを、失いたくない」
たったひと月だが、一緒に過ごせば分かる。
彼女は心根が綺麗すぎる。優しすぎる。
そんなことではこの世界では生きていけない。
「護ってほしいなどと思っていない」
「そんなことは百も承知です。これは私の勝手な願望なんです」
なんと返せばAは諦めてくれるのか。
俺だって、もう誰かを失うのは嫌なんだ。
「俺は認めない」
「それでも、私は鬼殺隊に入ります」
強い決意をにじませたAの瞳に、いつか来てしまうかもしれない最悪の未来を想像して、酷い焦燥感に襲われた。
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チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時