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早足で歩き続けた少女は、ある部屋の前で「こちらです。では」と言って、忙しいのかすぐにその場を離れてしまい、Aはその背中にお礼の言葉を述べて、ゆっくりとドアを開けて中に入る。
「義勇さん…!」
そこには、腕に包帯を巻かれて真っ青な顔をして眠っている、義勇の姿。
慌てて駆け寄りその手を握ると、血の気が引いたようなあまりの冷たさに、Aはこのまま義勇が死んでしまうのではないかと気が気ではなくなる。
「義勇さん、義勇さんっ」
「そんなに揺らしては身体に触りますよ」
突然聞こえた声に、その声が聞こえたドアの方に目を向けると、蝶の髪飾りをつけた美しい出で立ちの女性と目が合う。
「驚きました。冨岡さんにこんな可愛らしい恋人がいらっしゃったなんて…」
「恋人…?ち、違います。私はただの同居人で…」
「同居?それこそ問題です。貴女のような幼気な少女を、愛人として住まわせるなんて…」
「…ただ家のことをやってもらっているだけだ」
「義勇さんっ」
突然口を挟んできた寝ているはずの義勇の声に、Aは嬉しそうに義勇の手を握りなおす。
「良かったです。私、義勇さんが死んでしまうのではないかと、不安で不安で…」
「…なぜいる」
「せっかくお見舞いに来てくださった方に、その言い方はないと思いますよ」
「いいんです。分かってますから」
「…、…なんて健気なお嬢さんなんでしょう…冨岡さんに襲われそうになったら、いつでも家にいらしてください。…冨岡さん、今回は出血が酷かったんですから、くれぐれも安静にしていてくださいね」
何か少し勘違いしていそうな女性はそう言って部屋を出て行き、とたんに静かになった部屋にAの声だけが響きわたる。
「義勇さんのカラスさんが、教えてくれたんです。義勇さんが怪我をしたって…」
「これくらいの怪我じゃ、死にはしない」
「それでも、すごく身体は冷たいし、顔色も悪いです」
義勇の手を温めるように両手で包み込んだAは、それだけでは安心できなかったのか、傷口を確認するかのように全身をぺたぺたと触り始める。
「傷は腕だけなんですね。…とにかく、無事で本当に良かった」
安心したように微笑むAに、無言でまばたきを繰り返した義勇は、しばらくAの顔をじっと見つめたあと、「ああ」とだけ言って大人しくもう一度横になった。
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チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時