29 ページ31
・
次の日Aが目を覚ますと、太陽はすでに昇っており、何が起きたのか分からないAは慌てて飛び起きる。
「え、…え?」
「…起きたか」
そう言って書き物をしていた手を止めてAを振り返った義勇は、「おはよう」とほんの少し表情を柔らかくする。
「え…あれ、私昨日…」
「…逃げなかったな」
コトリと筆を置いてAに近付いてきた義勇は、そう言って、優しくAの頬に手を添わせる。
「…はい。でも私、なんだか記憶が…」
昨夜覚悟を決めて寝室で待っていたAは、緊張しすぎて会話もままならないAを見かねて、義勇が用意してくれたお茶を口にしてから先の記憶が、全くなかった。
「…え、もしかして私…」
「気持ちよさそうに寝ていた」
「えっ、じゃあ昨日は…」
「何もしてない」
「え…、で、でも私、本当に覚悟を決めて、ちゃんと本当に、」
「分かってる。眠らせたのは俺だ」
このままじゃ自分の気持ちを分かってもらえない、と焦るAをたしなめた義勇は、ゆっくりと立ち上がりそのまま羽織を羽織る。
「…お互い、朝から任務だ。任務に支障が出ては困る。それに俺は…、ただ、お前の気持ちを確かめたかっただけだ」
そう言ってAの唇を指先で何度か撫でた義勇は、「行ってくる」と言って部屋を出て行ってしまう。
「え…、」
何がなんだか分からないながらも、Aは久々に見た義勇の優しげな表情に、胸の奥がきゅっと苦しくなるのを感じる。
「義勇さん…」
やっと、やっと、本当の意味での恋仲になれたのだ。
この上ない嬉しさと幸せに浸っていたい気持ちは山々だが、Aもすぐに出なくては任務に間に合わなくなる。
急いで準備をして屋敷を出る頃には、幸せだった気持ちは奥に押しやり、これからの任務のことだけを考えていた。
377人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時