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最終選別が終わった日、Aが無事生きて帰るのだろうかと気が気ではない炭治郎と左近次は、家の中では待ちきれず、外に出てAが歩いて来るはずの方向を見つめていた。
「帰って、きますよね…?」
「……」
不安げな炭治郎の問いに何も答えない左近次は、これまで何度も見送ったまま帰ってこなかった弟子たちを思い、嘘でも気休めの言葉など言えなかった。
「…!この匂い…」
風に乗って流れてきた、優しくもどこか悲しみと寂しさを感じるAの匂い。
今日はそこにたくさんの複雑な感情の匂いも混じって、いかに最終選別が辛く大変だったかをうかがわせた。
「Aー!」
遠くにAの影が見え、居ても立っても居られAない炭治郎は、全速力でAに駆け寄りそのまま体当たりするようにAに抱きつく。
「A!本当に良かった!本当に良かったっ!」
そう叫びながら思いきりAを抱きしめる炭治郎は、今度はAの手を引いて左近次のところまで走りだす。
「た、炭治郎?」
私すごく疲れてるのに、と心の中で思いながらも、お面をつけていても分かるほどの大粒の涙を流している左近次の姿を見れば、そんな気持ちは一瞬でどこかに飛んでいってしまう。
「鱗滝さ…」
「よく…よく戻った…」
炭治郎に負けず劣らず強くAを抱きしめた左近次は、どんどんAの服をその涙で濡らしていく。
「義勇さんも中で待ってるぞ」
なぜか小さな声でそう教えてくれた炭治郎は、とたんに緊張した様子をみせるAを見て、優しい笑みを浮かべる。
「義勇さんが一番心配してたんだぞ、だから大丈夫だ」
自分を気遣ってくれる炭治郎の言葉にAは小さくうなづいて、恐る恐る義勇の待つ部屋へと入る。
「!」
Aを見て無言で立ち上がった義勇は、そのまま何も言うことなく炭治郎たちがしたようにきつくAを抱きしめる。
「…お元気そうですね」
「ああ」
「私、ずっと寂しかったです」
「ああ」
「私、義勇さんが好きです」
「ああ」
「私…、義勇さんのお嫁さんになりたいです」
「…!」
返事をしようとしたあと驚いたようにAから離れた義勇は、その真意をはかるようにじっとAの顔を見つめる。
「好きなんです。…義勇さん」
続けてそう言ったAに、義勇がいつものように「俺もだ」と答えてくれることはなかった。
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チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時