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「ヘンジー!ヘンジー!」

Aがひっそりと起きて洗濯や食事の支度を始め、義勇はまだ寝ているという薄暗い早朝、中庭で大きな声で騒ぐ義勇のカラスを止めに、Aは慌てて中庭へと走る。

「ちょっと、カラスさん!義勇さんまだ寝てるから、静かにね」
「ネテルー!オキロー!」
「カラスさんっ、しーっ!」
「良い、俺が頼んだ」

まだ寝ているはずの義勇の声に、慌てて後ろを振り返ったAは、「起こしてしまってごめんなさい」と義勇に頭を下げて謝ると、そのまま食事の支度を再開しに台所へと戻っていく。

「ヘンジー!」

義勇はカラスの足にくくりつけられていた手紙をほどいて内容に目を通し、憂げに小さなため息をひとつつく。

「……」

重い足取りで台所に向かい、義勇がAの背中に「今日の朝稽古はなしだ」と声をかけると、勢いよく振り返ったAが絶望したような表情で、「それは…私は失格ということですか?」と義勇にフラフラとした足取りで近付く。

「…Aと行きたいところがある」
「!それは…お出かけ…?」

今度は一転、嬉しそうな表情を浮かべるAに全く違うというのも可哀想な気がして、義勇は「道すがら、好きなものを一つ買ってやる」とAの頬を優しく撫でる。

「ふふふっ、ありがとうございます!」

嬉しそうに抱きついてきたAが急に大人しくなって義勇を見上げるので、「どうした?」と義勇も不思議そうに首をかしげながらAを見つめると、「なんだか今、すごくお兄ちゃんを感じました」とAはまた嬉しそうに笑う。

「お兄ちゃんの癖だったんです。こうして頬を優しく撫でるの」

そう言ってするりと義勇の頬をひと撫でするAは、神妙そうな顔つきをする義勇に「嫌でしたか?」と申し訳なさそうに動きを止める。

「…俺は、お前の兄にはなれない」
「はい。でも…お兄ちゃんだと思って慕わせていただくくらいは、許してほしいです」
「…兄には、なれない」

表情を変えずにそう繰り返した義勇に、大人しく「…分かりました」と返事をしたAは、落ち込んだ様子で食事の支度に戻る。

「…俺は、Aが好きだ」
「はい。…私も義勇さんが好きですよ」
「…。Aが、好きだ」
「…私は大丈夫ですから、気なんて使わないでください」

義勇に背中を向けたままそう言ったAは、まさか義勇が何か言いたげに自分を見つめていることなど気付くはずもなく、ただ黙々と食事の支度を進めるのだった。

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チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時

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