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どんどん足場の悪い道を進み、ついには山に入って目的地はどこなのだろうとAが思い始めた頃、義勇は突然足を止めて、「ここだ」と小さな小屋を指さす。

「こちらに住んでいる方に、どんなご用があるんですか?」
「…、」
「義勇。久しいな」
「ご無沙汰しています」

Aと義勇の会話を遮るように小屋から出てきた面を付けている老人に義勇が恭しく頭を下げるのを見て、Aも「初めまして」と深々と頭を下げる。

「お前がAか。…よく来た」
「は、はい。香坂Aです。よろしくお願いします」

もう一度深々とお辞儀をしたAに老人は「入れ」と入口のドアを開けて、義勇とAを中に招き入れる。

結局、ここに来た目的を義勇から聞きそびれてしまったAは、この小さな小屋に何の用があるのだろうかと、内心気になって仕方なかったが、義勇が出されたお茶に口をつけるのを見て、大人しくAもお茶に口をつけることにする。

「…鬼殺隊に入りたいそうだな」
「え、…はいっ」

目の前の老人がまさか自分に話しかけてくると思っていなかったAは、慌てて背筋をのばして大きくうなづく。

「女の身でありながら、なぜ鬼殺隊を目指す?…お前さんなら、一人の女性として今のままで充分幸せになれる」

今まで散々義勇に鬼殺隊は無理だ、と言われてきていたAだったが、初対面の人にまで遠回しに無理だと言われてしまうほど、自分は鬼殺隊には向いていないのだろうかと悲しい気持ちになる。

「…女性としての幸せなんて、いりません。私はただ、義勇さんと一緒にいられれば、それだけで幸せですから」
「なんだ、お前たち恋仲なのか」
「いいえ。兄のような存在だと思っております」

Aの返答に無言で義勇に顔を向けた老人は、視線を落としたまま顔を上げない義勇を見て、「くくく、」とこらえたような笑い声をもらす。

「…A」
「はい」
「兄と言うなら、義勇がいつか嫁をもらい所帯を持てば、ずっと一緒にというわけにはいかんぞ」
「…、たしかに…」

青天の霹靂、といった様子でまばたきを繰り返したAは、慌てて「どうしましょう、義勇さん。私、義勇さんとずっと一緒にいたいんです」と義勇の両手を握りしめる。

そんなAを見つめて一瞬何か考えるそぶりを見せる義勇だったが、結局無言のまま静かに視線を逸らしてしまう。

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チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時

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