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今、放課後の時間帯は吹奏楽部が使用中だから、
本当なら入っちゃいけない。
だけど、どうしてもと言いたいほどその人の事が気になった。
人生の中でピアノの音は結構聴いてきた。
ボカロでもピアノを使っている曲は多いし、
落ち着きたい時はピアノをよく聴いている。
このピアノは、聴いてきた中で1番優しい音をしている。
涙を拭い、鼻を啜りながら誰も居ない廊下を歩く。
時々先生と鉢合わせ、泣いている私を止めようとしたが
私は構っている暇も無く無視した。
音楽室の前に立ち、ドアに手を掛ける。
…いや、まずはノックだろうか。
そう考えた時には、もう私はドアを開けてしまっていた。
『っ…!』
窓なんて開いてないのに、風が吹いた気がした。
それは私の髪を揺らし心を奪って去っていく。
黒いピアノを橙色に染め、椅子に座り、ピアノを愛おしそうに弾く彼。
指先から生まれる新たな音は、私の心に何かの種を植え付けた。
『……天馬さん』
司「…Aか、何か用事だったか?」
その愛おしそうな瞳のまま、私の方に振り向く彼に
予想以上に意識してしまって脊髄反射のごとく顔を逸らす。
普段の彼とのギャップに顔が熱くなるのが分かった。
『あ、いえ…用事というか、寧々さんに、言われて』
司「寧々にか? まずお前 ─── 」
椅子から立ち上がった天馬さんが私の目元に触れる。
いきなり過ぎる距離の詰め方に思わず固まる。
これから何をされるかなんて、少女漫画に出てくる展開しか
今の私の脳内には浮かんでこなかった。
司「…大丈夫か? さっきまで泣いてたんじゃないのか、これ」
『はっ…いや、その…そう、なんですけど……』
司「それをオレに相談しに来たという事か! まず座れ」
…あぁ緊張した。
大丈夫、天馬さんはそんな事する人じゃないって分かってる。
まるで自己暗示のように心に語り掛ける。
『あの、この音楽室…貸し切りなんですか?』
司「ああ、ピアノを弾きたくなってな。 家にもあるが、つい」
『ピアノ、弾けたんですね』
司「幼い頃から弾いてたからな」
天馬さんは本当に凄い。
未来のスターを目指し、日々努力している。
そんな天馬さんだから、あまりにも自然に言葉が出た。
『…私、今日、神代さんに告白されたんです』
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「3」のうちに終われたら良いな…とは思ってます。
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ramune - めいさん» コメントありがとうございます!きゅんきゅんしてくれて嬉しいです。僕も親の前だと一人称変えてますよ笑 (2023年3月4日 23時) (レス) @page35 id: a4dd4a8261 (このIDを非表示/違反報告)
めい - まじで最高です!26話キュン死とかしそうてか僕もネット上では一人称僕ってゆってます!リアルは引かれるのでやめてますけどねw (2023年2月26日 15時) (レス) id: 1a8f013e22 (このIDを非表示/違反報告)
ramune - もぐもぐさん» ぎゃー!!ありがとうございます!!この作品にそんな時間を掛けて下さるとは…!次回作も内容しか思いつきません!ありがとうございます! (2022年12月23日 19時) (レス) id: b281f98d72 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐ - 今日話全部読んでみました.....!!!マジめっちゃ話面白くて、一気に読んじゃいましたwほんといい話でした。感動だぁ!もうずっとドキドキしっぱなしでしたwまた楽しみにしてます! (2022年10月15日 23時) (レス) @page46 id: 813177f50b (このIDを非表示/違反報告)
ramune - 海月ルナさん» ありがとうございます申し訳ございません…!! (2022年10月4日 21時) (レス) @page42 id: b281f98d72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ramune | 作成日時:2022年5月11日 19時