【EN-】ようこそヨンサン食堂へ(仮)-3 (ページ44)

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応急処置ページ44

「え…なぜ、ここにソンフン様が？」
「僕はいつもここで走ってるけど」

上下白のスポーツウェアをモデルの様に着こなし、汗さえ逆光に反射して天然のグリッター効果を生み出す天性の王子様が私の前に現れた。

「私は…犬のお散歩に…」

そう言って自分がさっきすっ転んで脚から血が出てることを思い出す。
サッとソンフンさんに背を向けて無理やり怪我をした脚を隠す。

「え？どうしたの？」
「いえ、気にしないで下さい」

隠すと言うよりそっぽ向いた、と言うのが正しいんだけどさ…。

「あ、脚…どうしたの」

結局ソンフンさんが反対側に回って私の正面に来たのですぐにバレた。

「散歩中…犬に引っ張られて転んだんですけど、もう大丈夫です」
「でも血止まってないじゃん」
「…あと数秒で止まりますから」

何の根拠もなく言うけど、傷口を押さえているティッシュはすでに真っ赤に染まっている。
え、止まるよね？私の血…

「ちょっと待ってね」

するとソンフンさんはスポーツウェアのポケットから小さいタオル取り出す。

「え、そんな」
「じっとしてて」

それを傷口に乗せ、もう片方のポケットから取り出したテーピング用のテープでぐるぐる巻きにして固定した。
少し不恰好ではあるけれど確実に応急措置にはなっている。

「あ…ありがとうございます」
「家に帰ったら水でよく洗って、きれいなガーゼを巻いて手で押さえるかテープで巻いてちゃんと止血して下さい」

さすがアスリート王子…
水で血流すくらいしか知識のない市民に素晴らしい処置と的確なアドバイスを授けてくれるなんて。
ここで会えたのがソンフン様で本当に良かった。

「じゃあ、僕はこれで」
「あ、はい…ありがと、うっ…ございました」

立ってご挨拶しようと思ったら怪我した脚に激痛が走って、変な声が出る。
それに気付いて走り出そうとしたソンフンさんが止まって振り返った。

「…痛いの？」
「いやー、そんなに？」

痛い痛い痛い痛い。
めっちゃ痛い。

「…大丈夫、じゃなさそうだね」
「少し休んでれば大丈夫ですよ」
「ホントに？」
「はい、だからもう行ってください」

心配そうにするソンフンさん。
だがしかし国家代表になられるであろうお方の邪魔を、私みたいな小娘が邪魔するわけにもいかない。

「本当にありがとうございましたー」

座ったままでの挨拶、お許しください。

でもね、結局…

「やっぱり…」
「うう…」

私が動く前に、ソンフンさんは一周して来てしまった。