【EN-】ようこそヨンサン食堂へ(仮)-3 (ページ29)

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ニキの恩返しページ29

「ただいま」
「おかえり」

お店から家に帰るとめずらしく先に帰っていた力くん。
テーブルの上に広げた書類とにらめっこしているみたい。

「早いね」
「あー、うん」

全て韓国語でぎっしりと書かれた文章を見ながらため息をついた。

「何読んでるの」
「契約書」
「何の」
「テレビ番組に出演するための」

へぇ…ってテレビ番組？

「え、デビュー決まったの？？」
「ううん、デビューするために出るの」

どういうことですか。

「知らない？サバ番」
「サバ…バン？」
「サバイバル番組だよ。ほら色んな事務所の練習生が出て、審査員とかテレビ見てる人たちがグループのメンバー決めてくやつ」

知らないわ。
そもそもこっち来てからろくにテレビも見てないのに。

「ホント何も知らないんだね」
「うるさいなーその分他のことには長けてるからいいの」
「本当に10代なの」

力くんに鼻て笑われたけど、別に気にしないもん。
アイドルのことをみんなが好きだと思ったら大間違いだからね？
この世界には他に沼れるものなんて沢山あるんだってばよ。

「で、それに出るの」
「もちろん。それが前提でこっちに来てるから」

最初から決まってたんだ。
知らなかった。

「やっとここまで来たって感じ」
「へー良かったじゃん」

もしも力くんがその番組でデビューが決まったら、もちろんここを出ていくことになるんだよね。
そしたら一気に遠い世界の存在なるのか…

「今のうちに色んなものにサインしといてよ」
「それ…もしもダメだったらこの家に居るの辛すぎる」

確かに、見る度に憂鬱になるな…。

「んーじゃあ、紙に書いてちょうだい」
「紙って？」
「今度、色紙買ってくるから。頼みますよ」
「仕方ないなー名前入れる？」

おーおー、すっかりタレント気取りですか？
でもこの子が将来、ツアーで世界を飛び回るようなスーパースターになったらとんでもない価値が出るのでは…？

「じゃあ、001ってナンバリングして。あと名前入りと名前なし2枚分お願いします」
「ちょっと、売る気満々じゃん」
「…布教用だって」
「布教…？友達居ないのに？」

あ、でも保存用にも1枚欲しいかなー。

「それとアルバムとか写真集とか出す度にサイン入れてちょうだい」
「強欲過ぎ」
「これまでの恩返しだと思ったら安いもんでしょ」
「恩返しを強要しないでよ」

貰える物はもらっておかないとね。