【EN-】ようこそヨンサン食堂へ(仮)-3 (ページ25)

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家出してやるページ25

足音が2人分聞こえる。
玄関に向かって行く様子をそっとドアに耳をつけて聞いていた。

「おじゃましました〜」

その声と共に、玄関のドアが開く音。
そして家の中は静まり返る。

「行った…？」

ドアを少し開けて、外界の様子を伺う。
ジェイ先輩の言う通り、あの女の子は意外と早く帰って行ったっぽい。

「また…来るのかなー」

うわー…通い出したら嫌やー。
それで目の前でイチャつかれたらどうしたら良いの？
私、この部屋から出れなくなるじゃん。
そしたらもう、お祖母ちゃんの所に戻ろう。
もともとそっちに住んでたんだし、お店に通うのも楽になるじゃん。

「家出してやる」
「誰が？」

外界から声が聞こえた。
少し開けたドアの隙間から、力くんが見える。

「いつの間に！？」
「あ、ちょっと」

急いでドアを閉めて、鍵をかける。
その場にしゃがみ込んで私はドアを背に耳を塞いだ。

「開けてよー」

ドアを叩く振動が私の体に伝わりながら、遠くでそんな声が聞こえる。
何かを言われることは分かってても、何を言われるか分からない時ほど怖いものはない。
アイドルからの『大事なお知らせ。』って文字を見て震える、ファンの気持ちってこんな感じ？

「開けないと…蹴って壊すよ」
「…え」
「良いの？」
「それは困る…」

ドアの向こう側から叩く音が止んだ。

「開けてくれないと、僕が困る」
「……………」
「Aちゃん不足で死にそう」

何それ。
私はカロリーじゃないんですけどね…

「開いた開いた」

鍵を開け、ドアノブを捻ると力くんが入ってきた。

「ちょっと待て！」
「なに」

抱きつこうとしてるその手を掴む。

「説明聞いてから、許可を下す」
「そんなの要らないよ」
「要らないってどう言うことだよ」
「僕が好きなのはAちゃんだけだもん」

コイツ…
そういえば、女はなんでも許すと思ってんだな？
いつからそんなチャラくなっちゃったの。

「じゃ、じゃあさっきの子は？」

抵抗してるはずの手を簡単に取られて、そのまま身体を反転させられる。

「あの子は、振り付けの先生の子だよ」
「…え？」

背中から抱きつかれて、完全に背後を取られた。

「振り付けの先生の子、と付き合ってんの」
「なんで？」
「だって…昨日の夜、タクシーの前で…」

あんなの見せられて、疑いが晴れるとお思いで？

「あー、ほっぺにキスされたやつ？」
「そうそう、…ほっぺ？」
「そう、挨拶だって。海外育ちだから」