【EN-】ようこそヨンサン食堂へ(仮)-3 (ページ23)

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フルネームページ23

「よろしくお願いします」
「よろしくね」

目から火花が飛び散ってんじゃないかってバチバチに目線合わせてるヤンくんと力くん。
すると背後の女の子が、力くんの上着の裾を引っ張った。

「ニキ、部屋いこ」
「あ、うん」

するとニキ…じゃなくて力くんは、女の子に微笑むとリードするように自室に消えていく。
私たちはその一連の流れをただ黙って見ていた。

「え、あの子…誰？Aの知ってる子？」
「いや…全然」

それにしてもスタイルめっちゃ良かったな…
顔も小さくて可愛いし、アイドルになれそうな感じ。

「なんか…どっかで見たことある、さっきの女の子」

ヤンくんが顎に手を当てて思い出そうとした。

「どこで？学校じゃないよな？」
「違うと思う」
「ニキより下に見えるよね、歳は」

3人でああでもないこうでもない…
と、話続ける中で私は力くんの部屋の扉をじっと見ていた。
あの中で何してんだろ…
流石にこんなに人が居るから、大したことはしてないとは思うけど。

「多分、事務所で見たんだと思う」
「え？マジで？じゃあウチの練習生？」
「女の練習生は分かんねーなー」

練習生…？
ああ、事務所で出会ったってこと？

「ても、女子とは交流全くないよね」
「うん、話したこともないし…普段はどこのフロアにいるの？」
「さあ、興味ないから全く分からん」

そういえば謎ルールある事務所だったっけ？
まーこうやってルールを破りまくってる、不良練習生がここに集まってますけど。

「中で何話してんのかな」
「ソヌヒョン、やめなって」
「聞こえる？」
「ジェイヒョンもー」

ソヌ先輩とジェイ先輩がニキくんの部屋のドアに耳を立ててる。
すると2人が何かを聞いたらしく、丸くした目を合わせた。

「え、なになに」

いや、ヤンくんも聞くんかい。

「聞いた？」
「今のどういうこと？」
「まさか親公認…？」

ヤダヤダ、聞きたくない。
心がなんかギュッって痛くなった。

「あ、Aさん」

その場にいられなくなって自分の部屋に逃げ込んだ。
鍵を閉めて心も閉じる。
ヘッドホンもして外界をシャットダウン。

「パブロ…ディエーゴ…ホセー…フランシスコ・デ・パウラ…ホワン・ネポムセーノ…マリーア・デ・ロス・レメディオス…クリスピアーノ…デ・ラ・サンティシマ・トリニダード…ルイス・ピカソ！」

意味もなく偉人のフルネームを息継ぎなして言ってみる。

「はぁ…痛い痛い」

それでも心がギュッとしたままだった。