【EN-】ようこそヨンサン食堂へ(仮)-3 (ページ3)

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「じゃあ、これがレジの鍵。あと0時になったら冷蔵品の運搬始まるけど、深夜番がチェックするんで何もせずそのままで良いからね」
「はい、分かりました」
「じゃあ頼んだよー」

大まかな説明を社長さんから聞くと、私は制服の上着を着てレジに立つ。
とは言ってもヨンサンの平日は昼間こそ、近くの会社で働く人達が行き交うけれど、夜遅くになると客足はその1/4にも満たない。
そこは近くにあるうちの食堂の環境とあまり変わらないんだと思った。

「…これ暇すぎて、学生がレジで勉強するのも納得行くわ」

初めてこっちに来て、レジでスマホいじったり勉強してる店員を見た時は衝撃を受けた。
日本じゃ店員が店のレジで座ってるとこ見たことないのに、韓国では仕事さえしてれば従業員はかなり自由に振る舞っている。
家の近くのコンビニは早朝にたまたま行ったら、スマホでライブ配信してたもんな…

「さすがにあれはどうかと思うけど」

そうつぶやいて私はレジにある椅子に座ると、借りた接客マニュアルに目を通していた。
でもこれ覚えたところで今日だけだもんな、と思いながら適当にペラペラと捲っていく。

「………あ」

すると入店を知らせる電子音が流れて、少し緊張感が走り姿勢を正した。
お店には1人の男の人がドリンクコーナーをうろうろしてる。
じっと見つめるのも気まずいので、私は立ち上がってレジの周りを整理しながらお客さんの行動を盗み見ていた。

「………ん？」

あのキャップ、マスク。
どっかで見たことある…

「まさか」

すると手に飲み物を持ったお客さんがレジへ向かって歩いて来た。
はい、もう確定。

「…何やってんのここで」
「ヒスンさん…」

いつも同じ格好してるから、すぐに彼のことだと分かってしまう。
刷り込みって怖い。

「知り合いに頼まれて」
「あー、キム・ソヌか」
「えっ、何で」

と言ってしまったらもう遅い。
ヒスンさんはしてやったりの顔で微笑む。

「ここでバイトしてんの知ってるよ」
「え…」

バレてたよ！ソヌ先輩！

「多分、あっちは俺にバレてるって思ってないだろうけど。変な変装してるし、俺も声掛けてないから」

あの変装に関しては私も意味ないと思う。
知ってる人が居たら丸分かりだよ、ソヌ先輩。

「別に言わないから、大丈夫」
「良かった…」

私がホッとして胸を撫で下ろすと、ヒスンさんはレジに両手を突いた。

「ただ、俺よりソヌを優先したのは許せない」