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『んー……』
ジリジリと鳴り響く目覚まし時計は毎朝のように煩わしく、頭まで被ったブランケットから出て大きく伸ばした背中は、脱力するとだらしなく猫背に曲がった。
堪え切れなくなった欠伸を手の平で隠しながら部屋の扉を開け、今の季節ではまだ冷たく感じる水で顔を洗う。洗濯したてのふわふわタオルで顔の水気を拭えば、先ほどまで重たかった瞼が嘘のようにパッチリと見開いた。
『おはよう』
『おはようございます』
そうして自室でセーラー服に着替えてリビングに入ると、そこにはタブレットを器用に使って新聞を読む彼の姿がある。
彼は両親を亡くした私を、4歳の時に引き取ってくれた恩人だ。血は一滴も繋がっておらず、事実上赤の他人だった。
だが、彼、晋助さんは私を娘のように育ててくれ、私も彼を父親のように慕っている。彼と家族だと証明できるものが何もなくても、何もあげられなくても、私に家族をくれた優しい人だ。
『今日は早いですね』
『急な早朝会議が入ってな』
『朝食はどうします?』
『それくらいの時間はあるさ』
ふっと柔らかく口角を上げて笑った晋助さんに頷き、トースターへ食パンを二枚入れる。ペーパーフィルターの中のコーヒーの粉へお湯をのの字に注いでいれば、食パンはキツネ色にこんがり焼けていた。
『あァ、そうだ。今日帰りは遅くなるから夕飯は先に食ってろ。それから……』
『玄関と窓の戸締りはしっかりして、夜の突然の訪問者には応対しない、ですよね?』
晋助さんは言葉を掻っ攫った私に、片方の眉を下げて見せては淹れたてのコーヒーを無言ですする。
ホテルのようなフロントやコンシェルジュがいるこのマンション、しかも最上階である三十階のココに泥棒が入ってくるとは思えないが、晋助さんの心配性は私の為だと思えば可愛く見えた。
私が寂しくないように、極力食事は共にする。朝はどちらかが玄関で見送る、など気が付いたら決まっていた家族のルールは、面倒臭いとも縛られているとも思えないほどに緩く穏やかに二人を繋いでいた。
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ハル(プロフ) - アカツキさん» ありがとうございます!お久しぶりです!また会えて嬉しいです╰(*´︶`*)╯♡これからも一緒に頑張りましょう!! (2022年1月22日 19時) (レス) id: 0456a00227 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 完結お疲れ様です、そしてお帰りなさいませ! ハルさんがまた占ツクにて執筆してくださって嬉しいです、今後の活動も応援しています (2022年1月22日 12時) (レス) id: c61df8f136 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 中村さん» わー!⁉︎中村さんだー、、!またお会いできて嬉しいです!コメントありがとうございます!こんなところでお会いできるなんて……!またどうか仲良くしてくださいませ😊😊😊 (2022年1月9日 18時) (レス) id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ☆辻村春樹☆さん» コメントありがとうございます!!読んでくださって嬉しいです!!お互い更新頑張りましょうね♬よければ仲良くしてください☺️ (2022年1月9日 18時) (レス) @page19 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - なんとなく久しぶりに占ツクを開いたらハルさんの新作が出ていて、わー!!?となりました、、!そのテンションのままコメント失礼しちゃってます💦 またハルさんのお話が読めて嬉しいです。執筆、思い切り楽しんでください!陰ながら応援させていただきます☺ (2022年1月8日 23時) (レス) id: 662e82697c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2022年1月2日 21時