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2ーーーー(side 夏木) ページ3

「夏木降りろ!」

と、艦長が夏木に容赦ない蹴りを入れた。蹴り込まれるようにハッチに入り、夏木がラッタルの手摺りに靴をかけて滑り降りると、上から絶叫が降った。
どすりと夏木の肩に何かが当たって落ちる。

夏木「艦長オォォォ__________ッ!」

悲痛すぎる夏木の叫びが艦中に響き渡った。




総監部に無線連絡を終えた夏木と冬原は何も言わずに発令所を飛び出し、艦長が閉めた通用ハッチへと向かう。

ハッチの真下には艦長の腕が転がっていた。

夏木が跪いて両手を下に差し入れて静かに抱え上げる。破れた袖の中の腕はもう温もりが失せていた。
冬原が先に立ち、一階層降りて食堂へ向かうと、子供たちもそろそろと続いた。
ぐるぐると何重もラップに包んだ後、冷蔵庫を開けて、その中に腕をしまおうとする____と。
子供たちから小さな悲鳴が上がった。




夏木「声をあげた奴は前に出ろ!」

堪忍袋の尾が切れた夏木が怒鳴る。厨房の中から食堂の子供たちを睨みつけ、


夏木「何で冷蔵庫にしまうのか教えてやろうか!?俺たちの艦長がお前らを助けたせいで、今甲板で食われてるからだよ!」


その後もいくつか続いた罵言に子供たちは完全に黙り込んだ。

冬原「________夏」


冬原の声でようやく夏木が我にかえる。
しかし怒りはどうしてもおさまらなかった。

冬原が子供たちに向かってにこりと笑った。



冬原「あのね」

穏やかに話しかける人懐こい声で続けられた言葉は夏木の怒鳴りよりもずっと辛辣で容赦がない。


冬原「どうするの。早く決めな」

追い打ちで一番小さい子が泣き出した。釣られて年少の子供たちが次々泣き出す。
もういいだろう、と見かねた夏木が止めようとしたときだ。



望「艦長さんの腕を冷蔵庫に入れてください」

口を開いたのは、背の高いショートカットの少女だった。恐らくこの中で一番年齢が高いだろう。
A以外にも女子がいることに夏木はそのとき初めて気づいた。


「ごめんなさい、私達が失礼でした」

Aがしっかりとこちらの目を見て言った。



「本当にすみません。」



そう言って、綺麗にお辞儀をする彼女。

それに続いて他も頭を下げる。



一番最初に頭を下げ、最後に頭を上げた彼女は冬原に向き直った。




「…春くん、私たちがどうすればいいのか指示をください。それに従って私たちは動くから。」

冬原「うん、わかった。俺たちは向こうで話して来るから子供達見てて。」

「わかりました。」






.

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作者名:ゆうな | 作成日時:2018年6月19日 15時

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