バースデードーナツ：05 ページ10
「――結局いつも通りか」
組み上げた社の中でドーナツと紅茶、それからAが、鎮座してカタクリを待っている。
いつも通りの光景だというのに、ドーナツもAも、特別な誘惑があるように見えるのは先程まで今日はドーナツを食べれないと踏んでいたせいだろうか。
頬の緩みをAに知られないように、カタクリはもう一度マフラーに顔を埋めた。
『メリエンダには少し遅い時間ですし、ドーナツもひとつだけですけどね。……それに』
カタクリがAの膝に頭を預けると、それを受け止めるような形で両手が添えられる。
見上げれば、手の主は困ったように眉を下げていた。
『今日は誕生日なんですよ？いつも通りで良いわけがありません。それなのに、私が見つけていなかったら働こうとしていただなんて。……本当に、もう』
珍しく溜息を吐いて、それから。
『あんまり、私の大切な方をいじめないであげて下さいね？』
「！」
(これか……っ)
殊更に甘く、柔らかな声でそう言ったAの顔は、先程見聞色の覇気で視たそれだった。
衝撃のあまり前後の状況を記憶していなかったが、今だったとは。
カタクリはもう一度マフラーに手を伸ばしたが、Aの手がそのままマフラーを外すのに間に合わず、隠すことは出来なくなった。この至近距離で、マフラー程度で表情が隠せるわけもなかったが。
「おれが誰をいじめたというんだ」
ただ反射的にそう返した。心臓の高鳴りを抑えるのに必死で、言葉の意味を考える余裕はカタクリにはなかった。
『お名前を言わなければわかりませんか？』
優しいままの声で、顔で、Aがカタクリに問いかける。
(どういう意味だ。おれが誰かを虐める？それに、Aにおれより大切に想う人間がいるなんて聞いていない)
考えた瞬間、怒りが沸き立つ。
(おれの為に生きると言った癖に、それ以上想うヤツがいるのか？冗談じゃない。あんなにおれのことばかり考えておいて、それ以上に大切なヤツなんているわけが―…)
「……ッ！」
『ふふ。どなたのことか、分かって下さったみたいですね』
そう、いるわけがない。Aにカタクリ以上に大切に想う人間など。
ならば答えはひとつしかなく。
『よろしくお願いしますね？……ああいけない。ドーナツが冷めてしまいますね。召し上がります？』
どこもかしこも熱くて仕方がない。こんな顔を見られるのは恥だ。屈辱だ。――それでもやっぱり。
「……食う」
その甘い誘惑にはどうしても抗えない。
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露木アマナ(プロフ) - ちょっと色々あって更新できてませんでした；；続きはゆるゆるお待ちいただけると嬉しいです(>_<") (2019年11月26日 13時) (
レス) id: c2b02f4b53 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 紅葉(クレハ)さん» 紅葉(クレハ)さんおいでませカタクリ沼ー！＼(*'▽'*)／ですが泣きもろくですか!?ﾋｴ、嬉しいやら申し訳ないやら…！本編も番外編もこれからは思う存分イチャイチャが書けるので、遅筆ではありますが責任、とらせて頂きますね！o(・ω・´o) (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(クレハ)(プロフ) - 貴方様のお蔭でカタクリ様の沼に浸かりました…そして更に泣きもろくなりました…どうしてくれるんですか！これはまたアマナさんに夢主とカタクリ様のイチャイチャを書いて責任をとってもらうしか…！！(訳:本編と番外共に滅茶苦茶面白かったです)(長文失礼しました) (2019年9月1日 17時) (レス) id: 966d05a96a (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ＊エアメル＊さん» えへへ…タイトルで予想されてるかなとか思ってたのですが驚いてもらえて作者冥利に尽きます(´-｀*)悲しい話にはならないので、青い春の夢を楽しんで頂ければ嬉しいです* (2019年8月17日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
＊エアメル＊(プロフ) - ま、まさかのそういう...？！凄すぎます...いやもう泣ける...こんな風に上手く青春を、学パロを入れてくるなんて.....(´；ω；｀) (2019年8月16日 18時) (レス) id: 3e0780c09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露木アマナ | 作成日時：2018年10月31日 23時
