バースデードーナツ：04 ページ9
「……！」
それを見た瞬間、カタクリの心臓がドクンと大きく脈打った。
怒りでも、呆れでも、ましてやAが度々見せる幸せの表情とも違う。
言うなれば、そう……慈愛。母親が子供を見るような慈しみが、カタクリの視た未来にあった。
ただそれは、カタクリの母親であるリンリンが持たないもの。カタクリにとっては、見たことのない類のものだった。
動揺でカタクリがAから目を逸らす。
すると、またしても予想外のものが。
「ドーナツ……？」
Aが出てきた扉の奥に、ドーナツが見えた。
豪華な見た目、普通の人間はおよそ食べきれないであろう大きさ。
Aが自分用に作ったとは思えないが、食べさせる予定のない者に用意するわけもない。
(幻覚か？)
思わずAと同じような発想をする程には、冷静さを欠いている。
『あっ！あのドーナツはですね!?その、つい、思わず、うっかり、そのう……カタクリ様を』
しどろもどろになりながら顔を赤くするA。
どうやらあのドーナツは本物らしい。とすれば、Aは。
「お前にも、未来が視えるのか？」
『えっ？まさか……あっ、ふふっ！もしかして、パーティーではドーナツが出ませんでした？』
それとも心か。そうでなければ説明がつかない。
くすくすと笑うAは楽しそうで、『やっぱり視えてしまったのかもしれないですね』なんておどけてみせる。
見透かされたカタクリは、胸の内をくすぐられるような感覚を覚えて居心地悪そうにマフラーを握り締めた。
『ではこの後の未来はこうです。カタクリ様はお仕事をすることなく、私の膝で私が作ったバースデードーナツを召し上がる。それから誕生日が終わるまで、カタクリ様の我儘を私が叶えられるだけ叶えるんです。そういう未来に致しましょう』
「なんだそれは。そんな未来が……」
あるわけない、とは言えなかった。冷静でない以上、カタクリに本当の未来は視えないのだから。
だがそんなことが、そんな甘いことがあっていいのか。
(……ああ、だがそうだ。お前はいつだって、どこまでも、おれに甘い)
未来は視えない。Aの語る未来はあまりにも甘い。
以前ならば否定したはずのその未来を。
(期待してしまうなんて、どうかしている)
きっとAに出会った時からずっと。
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露木アマナ(プロフ) - ちょっと色々あって更新できてませんでした；；続きはゆるゆるお待ちいただけると嬉しいです(>_<") (2019年11月26日 13時) (
レス) id: c2b02f4b53 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 紅葉(クレハ)さん» 紅葉(クレハ)さんおいでませカタクリ沼ー！＼(*'▽'*)／ですが泣きもろくですか!?ﾋｴ、嬉しいやら申し訳ないやら…！本編も番外編もこれからは思う存分イチャイチャが書けるので、遅筆ではありますが責任、とらせて頂きますね！o(・ω・´o) (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(クレハ)(プロフ) - 貴方様のお蔭でカタクリ様の沼に浸かりました…そして更に泣きもろくなりました…どうしてくれるんですか！これはまたアマナさんに夢主とカタクリ様のイチャイチャを書いて責任をとってもらうしか…！！(訳:本編と番外共に滅茶苦茶面白かったです)(長文失礼しました) (2019年9月1日 17時) (レス) id: 966d05a96a (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ＊エアメル＊さん» えへへ…タイトルで予想されてるかなとか思ってたのですが驚いてもらえて作者冥利に尽きます(´-｀*)悲しい話にはならないので、青い春の夢を楽しんで頂ければ嬉しいです* (2019年8月17日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
＊エアメル＊(プロフ) - ま、まさかのそういう...？！凄すぎます...いやもう泣ける...こんな風に上手く青春を、学パロを入れてくるなんて.....(´；ω；｀) (2019年8月16日 18時) (レス) id: 3e0780c09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露木アマナ | 作成日時：2018年10月31日 23時
