最強をダメにする最弱：２

答えはどこに ページ43

どこか悔しげに視線を逸らす姿から伝わるのは、侮辱だとか無礼だとかに対する怒りではなくて、強い戸惑い。
カタクリ様がそれに困っているなら応えて差し上げたい。けれど…。

『…ごめんなさい。私も考えてみたのですけれど、私にとってカタクリ様がどういう存在かというのには、まだ私自身上手く言葉に出来なくて。誰より大切です。誰より幸せになって欲しいと思っています。誰より尊敬していますし、お傍にいられることが幸せです。でもそう思うことが、特別に想うことが…』

恋と言われると、なんだか違うような気がして。
身分が違うとか、畏れ多いとかいうのを除いても、私はブリュレ様の言うような【お姫様】を望んでいるわけではない。けれど、いつだってカタクリ様のことを考えているし、そういう時間が私はとても好きだ。…そのせいで、昨日みたいに何も手につかなくなることもあるけれど。
こんな気持ちを何と呼べばいいのか、私は知らない。何か当てはまるような名前を、知っていたら良かったのだけど。

目を伏せて、もう一度適当な言葉がないか探してみても、答えは出ない。

『…駄目ですね、やっぱり良い言葉が見つかりません。でも、大人の男性であることくらいはちゃんとわかっていますよ？強くて、格好良くて、頼りになって、包容力もあって。ただ、それに加えて可愛らしいと思うところもたくさ、んぐっ？』

整理しながらひとつひとつ自分の気持ちを言葉にしていると、遮るように突然白い何かに口を塞がれた。黒いグローブに姿が変わったことで、カタクリ様が能力で伸ばした手で私の口を塞いだのだと気付いた。
カタクリ様が聞いたことなのにどうして、と不思議に思いながら顔をあげてみれば。

「…少し、黙っていろ」

頬を真っ赤にして、眉をきつく寄せて、苦しげに瞼を震わせる、そんな顔が視界に映った。
照れているだけなら可愛いと思えただろうけれど、熱のこもった瞳と目が合って、心臓が掴まれたように動くことも出来ない。
顔が熱くなってしまうのは、その熱に当てられたせいか、それともグローブ越しの温度が想像以上に高かったからか。どちらでも、どちらでもなくても、原因など関係なく、体温はどんどん上がっていく。

(こんなに目が離せないのに、こんなにわからないだなんて)

知りたいと思った。自分の目で見て、その上で貴方という存在を。
でもわからない。こんな熱を、私は知らない。

―カタクリ様は今、何を思っているのだろう。

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