雪崩前 ページ35
(…イライラする)
時計の針が11を過ぎた頃、ようやく城へと戻ってきたカタクリは、カツカツと足音を鳴らしながら廊下を歩いていた。
苦戦した、というわけではない。たかが1億そこそこの連中にひけをとるなど有り得ない。
だが、いかんせん数が多かった。
報告にあった5隻の他に、ナワバリウミウシの領域外から20数隻。戦力が出払っている状態でそれだけの数を海上で相手をするには、どうしても時間がかかってしまう。
(いくつかの海賊団が手を組んでいた。こんな時を狙われるとは、どこかからお茶会の情報が漏れている可能性があるな)
招待状も既に方々に出してある。漏れても不思議なことはない。
ただ、【漏らしたヤツ】が存在するのであれば、それは聞き出す必要があったかもしれない。
普段であればその辺りも徹底したが、皆殺し以外の選択はなかった。何故なら。
(…ストレスだ)
どうしようもなく、強烈な。
(あいつが…)
カモミールティーなんて用意するから。
一週間だ。一週間おれは耐えてきた。メリエンダの消化不良に。
だが意識しないようにと思えば逆に意識するもので、Aが作ったドーナツがどれかもすぐに判別がつくようになってしまったが、それを除いても今日は酷かった。
一目で判った。あまりに気合が入っていたから。味は一週間前のそれ以上で。加えてあの時と同じブレンドのカモミールティー。
そんなものを味わって思い出さないわけがない。あの時の幸福感を。
【おれを幸せにするドーナツ】という点では成功だ。だが、【あの時】を思い出せばそれだけ、求める欲も強くなる。
その直後にあいつの顔を見たら…
(A。お前はあの時、何を言おうとした)
あの瞳は、そうだ。10日前の。おれを捉えようとする、そういう瞳だ。
恐らく、敵襲があったのは幸運だった。あの言葉の続きを、あの場で言わせてはいけなかったような、そんな予感がある。
だというのに、一方で、おれは聞きたいと思ってしまっていた。
ストレスだ。
消化不良も。
遮られたのも。
続いた連戦も。
溜まりに溜まって、どうにかなってしまいそうだ。
「…ん？」
そんな時、ふと廊下に何かが落ちているのを見つけた。
(髪留め…)
拾い上げれば、それは女物の髪留めだった。
コムギ島に女性は多くない。そんな城内で、髪留をつける女といえば。
(こんな時でも、お前はおれに入り込んでくるのか)
ストレスだ。――だから。
お前に会いに行くなんて行動も全部、ストレスのせいだ。
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露木アマナ(プロフ) - 豆腐さん» 豆腐さんコメントありがとうございます！ﾆﾏﾆﾏして頂けて嬉しいです(*´▽｀*)生きがいだなんて；；私も豆腐さんのコメントで頑張れます！本当にありがとうございます…！ (2019年4月10日 23時) (
レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
豆腐 - 深夜に申し訳ありません。めちゃくちゃ最高です……ﾆﾏﾆﾏが止まらなくて、この小説を読むことが、私の生きがいになっています！更新頑張ってください！ (2019年4月8日 0時) (レス) id: a9fbc04af8 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - とうとうこちらの作品で評価500票を頂きました…！本当に、本当にありがとうございます！！ヽ(；▽；)ノ (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ティコさん» 今はちょっと更新が出来ていなくて３は不穏な空気が流れておりますが、またティコさんが悶えるような展開になるように頑張りますね！ありがとうございます！ (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ティコさん» そ、そんな嬉しいお言葉を頂いていいのでしょうか…!?推しではないのに読んで下さったことも、それで悶えて下さったことも嬉しくて嬉しくて私が召されそうです…！｡・ﾟ・(ﾉ▽`)・ﾟ・｡ おかしいなんてとんでもない！こんなに沢山お言葉を伝えて下さって感激です…！ (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露木アマナ | 作成日時：2018年6月30日 8時
