居残りの夜 ページ29
『栄養価の高い…いやでも内臓は健康だったしやっぱりストレス…』
夜の食糧庫。
保管された食糧をひとつずつ確認しながら、ドーナツに使えないか吟味する。
『甘いものを好まれるから、蜂蜜とかどうかな…わっ何このフルーツ』
あの時は自分の知識と経験に基づいたドーナツを作るだけだったけれど、ここは“万の国”。
見たこともない食材が山程あって、ひとつずつ焼いたり煮たりと味を確かめるのは骨が折れる。
『ここにあるんだから食べても身体に害はないだろうけど…』
味は実際に確かめないといけないけれど、成分や調理法は多少知識がないと難しそうだ。
『…書庫ってこの時間でも開いてるかな』
『えーっと書庫は…』
ホールケーキ城程ではないけれど、やはり城なだけあって広い。おまけにすっかり遅い時間になってしまったから、昼間とは大分景色が違う。
『…ふふ』
なんだか1週間前みたいだ。
あの時はカタクリ様に運んで貰っていたから、こんな風に廊下を歩いたりはしなかったけれど。
(…あ)
そんなことを考えて、私は自分のある変化に気付く。
(深夜に厨房に居残ることなんて、昔はよくあったのに)
勿論移動は自分自身。今の状況に近いのはむしろそちらの方だろう。
―それでも私の頭に浮かぶのは。
(…仕方ないよね。あんなに幸せだったんだもの)
塗り替えられていく。私の世界も、人生も。
―書庫に辿り着くことは出来たけれど、鍵がかかっていて結局中には入れず仕舞い。
(まあ、そうよね)
カタクリ様が治めているのだから、厳重であって当然だ。元々大して期待はしていなかった。
『さて、書庫は昼間にまた来るとして、もう一度厨房に…あれ？』
踵を返そうとして、廊下の先から明かりが漏れていることに気付く。
なんとなく引き寄せられながら覚えたての地図を頭の中に広げると、思い当たったのは―…
『執務室？……まさか』
まさかとは思うけれど。
嫌な予感を抱きながら、扉を2回ノックする。
少しの沈黙。それからドアが勝手に開かれた。
「…何故お前がこんな時間にここにいる」
(やっぱり…)
『それはこちらのセリフです。…こんばんは、カタクリ様』
中にいたのはやはりカタクリ様だった。こんなことまで1週間前と同じでなくて良いのに。
それでもお顔を見れたことは嬉しくて、私は落胆と喜びの混ざった顔で苦笑するのだった。
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露木アマナ(プロフ) - 豆腐さん» 豆腐さんコメントありがとうございます！ﾆﾏﾆﾏして頂けて嬉しいです(*´▽｀*)生きがいだなんて；；私も豆腐さんのコメントで頑張れます！本当にありがとうございます…！ (2019年4月10日 23時) (
レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
豆腐 - 深夜に申し訳ありません。めちゃくちゃ最高です……ﾆﾏﾆﾏが止まらなくて、この小説を読むことが、私の生きがいになっています！更新頑張ってください！ (2019年4月8日 0時) (レス) id: a9fbc04af8 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - とうとうこちらの作品で評価500票を頂きました…！本当に、本当にありがとうございます！！ヽ(；▽；)ノ (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ティコさん» 今はちょっと更新が出来ていなくて３は不穏な空気が流れておりますが、またティコさんが悶えるような展開になるように頑張りますね！ありがとうございます！ (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ティコさん» そ、そんな嬉しいお言葉を頂いていいのでしょうか…!?推しではないのに読んで下さったことも、それで悶えて下さったことも嬉しくて嬉しくて私が召されそうです…！｡・ﾟ・(ﾉ▽`)・ﾟ・｡ おかしいなんてとんでもない！こんなに沢山お言葉を伝えて下さって感激です…！ (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露木アマナ | 作成日時：2018年6月30日 8時
