まっさらな朝 ページ19
それから船に揺られること14時間。兵士からコムギ島到着の連絡を受けたのは、まだ太陽が昇りきっていない時間だった。
もうすっかり身支度を済ませていることに驚かれたけれど、パティシエの朝は早いものだと言うと納得された。
ちゃんと休めたか、なんて聞かれたけれど。
(それが心配なのはカタクリ様の方…)
きっと昨夜もまともに休んでいないであろう人のことを考えて、私は溜息を吐いた。
昨日は色々と失敗続きだったので夜のことまでは踏み込まなかったけれど、これに関しては本当にどうにかして欲しい…というよりどうにかしたい問題だ。
その為にはもっとカタクリ様のことを知らないと。横にならない理由がわかれば説得の方法も考えられるかもしれない。
(兵士さん達はカタクリ様には何も言わないのかな?…いや、言えないのかな。ひとつ間違えれば不敬罪になりそうだものね)
「Aさん、下船しますからデッキまで来てください!」
『あっ、はーい!』
とうとうコムギ島に降りるんだ。
課題は山積みだけど、悩むより今は新しい世界を楽しもう。
―そんな風に思いながらデッキに出た私を待っていたのは。
『わあ…!』
トットランドの島はそれぞれ名前通りの食材で出来ている。
入国の時に訪れたカカオ島はチョコレートの島で、コムギ島は…
『真っ白…!』
銀世界とは少し違う、雪よりももう少し柔らかい白が島全体に広がっている。船べりに駆け寄ってみると、朝日に照らされた白がふんわりした光を反射していた。
ホールケーキアイランドより北にあるせいか少しだけ気温が低いけれど、一見すると雪国な景色ほど寒くはない。
「あまり身を乗り出すな。落ちたらどうする」
『カタクリ様!おはようございます!』
聴き慣れた声に振り向くと、カタクリ様がデッキに出てきたところだった。
「…おはよう。いいから離れろ。降りてからいくらでも見れば良いだろう」
『ごめんなさい、あんまり綺麗で…』
大人しく離れてカタクリ様の方に歩み寄る。
朝からこんなに綺麗な景色を見て、こんな風にカタクリ様と挨拶を交わせるなんて、すごい贅沢をしている気がする。
「だが…そうか。コムギ島に新しい人間が来るのは久しぶりだな」
『そうなんですか?』
「ああ。ここは最後の砦。入口のカカオ島から最も離れた島だからな」
『最後の…』
入口から最も遠いから、その分人もあまり来ない。
最後の砦だなんて、さすがシャーロット家最強と言われるカタクリ様が治める島だ。
1005人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
露木アマナ(プロフ) - 豆腐さん» 豆腐さんコメントありがとうございます!ニマニマして頂けて嬉しいです(*´▽`*)生きがいだなんて;;私も豆腐さんのコメントで頑張れます!本当にありがとうございます…! (2019年4月10日 23時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
豆腐 - 深夜に申し訳ありません。めちゃくちゃ最高です……ニマニマが止まらなくて、この小説を読むことが、私の生きがいになっています!更新頑張ってください! (2019年4月8日 0時) (レス) id: a9fbc04af8 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - とうとうこちらの作品で評価500票を頂きました…!本当に、本当にありがとうございます!!ヽ(;▽;)ノ (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ティコさん» 今はちょっと更新が出来ていなくて3は不穏な空気が流れておりますが、またティコさんが悶えるような展開になるように頑張りますね!ありがとうございます! (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ティコさん» そ、そんな嬉しいお言葉を頂いていいのでしょうか…!?推しではないのに読んで下さったことも、それで悶えて下さったことも嬉しくて嬉しくて私が召されそうです…!。・゚・(ノ▽`)・゚・。 おかしいなんてとんでもない!こんなに沢山お言葉を伝えて下さって感激です…! (2019年3月1日 0時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月30日 8時