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秘密の契約 ページ10

能力を解除された私は今、改めてカタクリ様と向かい合っていた。

(それにしても…)

大きい。先程近くで見たばかりなのだけど、こうして壁にもたれ掛かるカタクリ様を見上げるとなんというか、圧巻の一言だ。
身長の高さもそうだけれど、隆々とした筋肉とか、オーラでより存在感を増しているような気がする。

感嘆の息を漏らしながらじっと見つめていると、カタクリ様は一瞬眉をひそめ、それから口を開いた。開いたといっても、もこもこのファーで覆われてしまってあの大きな口は確認出来ないけれど。

「閉じ込められても構わないと言ったな」
『はい。厨房は何度かお借りしたいですけれど、後はどこにいても変わりませんので』
「…フン。ではこうだ。この部屋のクローゼットの中に、モチの部屋を用意する。お前はおれが仕事で離れる間そこで生活、深夜のみおれが同行して厨房に連れて行く。それ以外は常におれの監視下だ。いいな」

間違いのないように頭の中でカタクリ様の言葉を整理する。

(ということは…)

『はい、承知致しました。…あの』
「なんだ…。っ!…立場を弁えろ。お前は客人ではなく囚人だ」
『えっ?私まだ…』
「『お仕事中以外はお傍にいて良いということですか?』と言おうとしただろう。お前は次にこう言う。『未来が見えるんですか?』…見聞色の覇気だ。その程度も知らないとはな」
『見聞色の覇気…そんなことまで…』

益々もってすごい。

『不快な思いをさせてしまったのでしたら申し訳ありません。けれど、監視でも嬉しいんです。…恥ずかしながら、カタクリ様のことはこの通り、知らないことばかりで。知らないままでカタクリ様好みのドーナツなんて、到底作れませんから』

謝罪と共に正直な想いを伝える。そうして気付く。
そうだ。【誰かの為のお菓子】は、作り手の力だけでは作れないんだ。

(…本当に、時間がいくらあっても足りない)

けれどそんな泣き言は許されない。時間がないなら使える時間を最大限使うだけ。
私は決意も新たに拳を握りしめた……のだが。

『申し訳ありませんカタクリ様』
「…謝罪もしつこいと鬱陶しい。!……成程、確かにそれは問題だ」
『畏れながら、身体を洗わせて頂けないでしょうか…!油と砂糖まみれでは流石に…』

ドーナツの山に埋もれていたせいで、服も髪も、全身ベタベタになっていたのに今更気付いた。
恥ずかしさと申し訳なさでカタクリ様に合わせる顔もなく、私は俯きながらそう頼み込むのだった。

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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時

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