最強をダメにする最弱：１

in white ページ8

「お前の存在ごと隠す必要がある。今から社を解くが、お前の周りを別のモチで包む。おれが良いと言うまで物音ひとつ立てるんじゃないぞ」
『は、はい』

返事をするや否や、足元から私の周囲を覆うように白い壁が生成されていく。

(これ、全部おもちだったんだ…カタクリ様が悪魔の実の能力者ということは聞いていたけど。おもちってことは“モチモチの実”…みたいな感じかな)

でもお好きなのはドーナツなんだ…などと考えながら、私は音を立てることのないよう静かに膝を折って出来上がった空間に座った。



様子をうかがうように耳を澄ませる。
…しかし、外の音はまるで聞こえない。防音…？

(でも、そっか。そうだよね)

外の音が聞こえるとしたら、それは中の音も外に聞こえる環境ということ。カタクリ様の声も、私の声も。それでは今から隠そうとしても無意味だ。
能力で作った音の漏れない空間。更に人払いをしている状況。

(それでも【物音を立てるな】だなんて…)

慎重さと、とても強い警戒心。
カタクリ様は“スイート三将星”のお一人。多くの種族、多くの人が住まう国を治めるシャーロット家、ビッグ・マム海賊団の最高幹部。更に“シャーロット家の最高傑作”とまで呼ばれている。
単純な力だけじゃないんだろう。カタクリ様の強さは。だからこそ、あんなに尊敬されている。

白い空間で冷静さを取り戻しながら、改めてカタクリ様の凄さを認識する。
けれど―…

(そんな方があんな表情をされるんだから本当に…！)

冷静さはどこへやら。先程の姿を思い出す度に頬が緩んでしまう。
…と、同時に自分の大胆さに寒気もする。人間の欲と勢いはこうも計り知れないものか。
反省こそすれ、後悔は少しもないのだけれど。

(何を作ろう。後で好みを伺うにしても、いくつか案を練っておいて損はないよね)

真っ白な無音の世界とはなかなか感覚が狂うもので、どれだけ時間が経っているのかさっぱり分からない。ずっと閉じ込められていたらそれこそ気が狂うかもしれない。

けれど、そんな状況で私はむしろ落ち着いていた。色んなことを考える。色んなことといっても、カタクリ様のことばかりだけれど。
中にいても外にいても同じなら、狂う理由があるはずもない。

私に与えられた3日間。それは、私の全てでカタクリ様を幸せにする、その瞬間の為だけにあるのだから。

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