沸騰と葛藤 ページ39
くそっ!顔が、頭が、熱でおかしくなりそうだ!
確かに何かを企んでいる気配は感じていた。だが、どうせ何かしらの理由をつけて強引に事を進められることはわかっていたし、おれがそれを拒絶しないこともわかっていた。
あくまでも【おれの為に】行動していることを嫌でも思い知らされたからだ。
それがまさか。
(膝枕だと!?馬鹿げてる、今までで一番!)
膝枕なんて生涯経験がない。当然だ。誰にも【横になる姿】など見せなかったのだから。
それも食べるのも全て任せろだなんて。正気の沙汰ではない。いやこいつの言動はどれも正気の沙汰ではない。だからこそ翻弄される。
だが膝枕がなんだ。横になる姿も素顔も、この女には既に見られている。これ以上の羞恥があるものか。
そう覚悟して頭を預けた――が。
「…っ」
(な、んだこれは…!)
膝枕というものは、あまりにも刺激が強かった。
自分の頭を受け止めるものの柔らかさと温かさ。ドーナツと同じものと、それとは違う甘い香り。至近距離で感じるそれらは、あまりにも直接的に感覚を刺激する。
(こいつ、自分の胸が当たっていることに気づいていないのか!?)
おまけに身体の規格が違うせいでどう足掻いても胸に当たるのは避けられない。
だがここまできて逃げるわけにもいかない。
「……問題、ない。さっさとしろ…っ」
熱に支配されそうになるのを堪えながら絞り出す。
相手の余裕が気に入らないなどと考える余裕すらない。
『カタクリ様は何もなさらず、私に全てお任せ下さいね』
崩れそうになるのを必死に耐える。それなのに。
『ひとつめはクリームブリュレのドーナツです。口をお開け下さい?はい、あーん』
穏やかな微笑みのまま、Aがカタクリの名を呼ぶ。優しく、甘い声で。
(酷い恥辱だ!子供じゃないんだぞ!?こんな恥が、辱めが…!)
それが酷く息苦しく、酷く腹立たしい。
「く…っ!あ、あ〜!」
(ええい、もう知るか!どうせ殺すんだ!)
社の中にいることで気が緩んでいた。半ばやけになって、差し出されたドーナツを受け入れる。
―思えば羞恥もプライドも、残っていたのはそれまでだった。
ドーナツを口に含み、咀嚼。
キャラメリゼされたカリカリの表面。
サクサクのクロワッサン生地。
中から溢れ出る温かでトロトロのクリーム。
それらを一口で味わった瞬間。
「〜〜〜!!うまし!!!!」
強烈な幸福感が全身を駆け巡る。もはやあるのは【食べたい】という感情だけ。
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時